Author: Alice Walker
翻訳版の有無: あり「カラーパープル」
映像化: あり。「カラーパープル」
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「誰かに踏みにじられても、人には立ち上がる力があると気づける」というベネフィットを得られます。
本作の紹介は今日行いますが、実は一月末時点で既に読了していました。
紹介するにあたり、映画も観て、書籍と比べながら語りたいなと思ったので、投稿を止めていました。
その間特にアウトプットしなかったため、自分のメンタルバランスを崩すという不思議な体験をする羽目に 笑
本来読もうと思っていた洋書も手につかず、別なことをしたり、気晴らしに別の洋書に手を出したら読めたのでそちらを読み進めるという時間を過ごしていました。
(こんなメンタルでも洋書に手を出す=インプットすることが出来るのは、不思議なことだと思います。)
そして、機能映画を観終え、気持ちが新たになったことで途中まで下書きしていた紹介文も削除し、書き直しました。
映画と書籍の内容が混乱しないように注意します!
基本的に書籍の内容をベースに書いてます。
内容はほぼ同じでしたが、映画は少し改変しているし基本的にセリー視点で物語を進めていて、そのおかげでスムーズに流れています。
本作は主人公のセリーとネティ(Celie and Nettie)の姉妹が男性の手により離れ離れになり、それぞれの世界で自分の居場所を確立していく話です。
加えて、当時は黒人女性というだけでつらい目に遭いながらも強く生きていく内容となり、惹きつけられます。
タイトルThe Color Purpleの「紫という色」がどういう意図で作中に登場したかという点は、作中で本当に僅かに触れられる程度ですが(私は詳細に説明されたとは思わなかった)、紫という色がどんな過程で生まれるかを考えると、セリーとネティが送る人生をとてもよく象徴している色だと感じました。
この話はセリーとネティが生涯で出会い影響を受けた様々な黒人女性達も描いていますが、同じく重要な役割を果たす男性達も登場しました。
特にセリーの夫となるミスター(Mister Albert)は紫を表現するに必要な人です。
二人の存在に対し、鏡となるのがミスターです。
この話を読み進めると感じるのは「物事の理不尽さ」。
セリーとネティは男性からもたらされた理不尽さに翻弄され、激動の人生を送ることになりますが、ミスターは当時の世の中で作り出された「男としてあるべき姿」というレールからはみ出さないよう必死に生き、時同じく自分がやりたいことが叶わない理不尽さを味わっています。
まずセリーとネティですが、大きな障害となるのが父親でした。
父親の虐待により妊娠出産を経験し、子供を取り上げられたセリーはミスターと望まぬ結婚をさせられました。
ミスターはミスターで、彼の父の反対により自身が本当に愛する女性シュグ(Shug Avery)と結婚できず、前妻アニージュリア(Annie Julia)と結婚し家庭を築きましたが、アニージュリアは浮気相手に殺されるという悲劇を経験しています。
姉妹とのかかわりでいうと、ミスターは当初ネティと結婚を望んだのに姉妹の父に申し出を断られます。
望まぬものを与えられ、そこで得たものをも取り上げられるという経験は、セリーとミスターが経験する共通点です。
(ミスターとシュグの間には婚外子もいたのだから驚き。)
一方のネティは、父親の再婚を機に彼の元からセリーのところへ避難しますが、そこでは居場所を作れず、ミスターの家を出ることに。
物理的に離れ、かつミスターが郵便物を管理していたことから姉妹は長い間音信不通になるのですが、ネティはサミュエルとコリーン夫婦(Samuel and Corrine)、二人の養子のオリビアとアダム(Olivia and Adam)と共に宣教師の活動の一環でアフリカへ渡り生活します。
世の不思議で、夫妻の養子は二人ともセリーが出産した子供達でした。
ナニーの立場でこの家族に受け入れられるネティは、表面上は他人でありながら、家族の繋がりを感じながらアフリカで過ごします。
映画では回想シーンのため大幅カットでしたが、アフリカで生活した先は一夫多妻制の地域だったため、サミュエル氏に二人の妻がいるとして周囲から見られ、かつオリビアとアダムもネティに懐いていたことで、コリーンとの仲に亀裂が入っていきます。
愛を知らないネティも、人からの妬みにより理不尽な思いを抱いて生活することになります。
さて、カラーパープル「紫という色」を象徴するのが、セリーとネティを取り巻く人間関係。
紫は、赤と青を混ぜることによって生まれる色ですが、赤も青も主張の強い色ですね。
例えばパステルカラーと比べると、どちらも境界線がありますが、混ざり合うことで新しい色=紫を生み出します。
どちらの魅力をそぐことなく上手に調和され、美しい紫が生まれますが、この作品にはまさにそういう人間関係がたくさん出てきました。
セリーがミスターとその家族の中で過ごした時間も、まさに紫色。
ミスターと前妻との間に生まれた子供達、その長男ハーポ(Harpo)が結婚して彼の家族とも合わさり新しいコミュニティーが出来ます。
更にすごいのが、ハーポと妻ソフィア(Sofia)は仲違いしてそれぞれ新しいパートナーを連れてくるのですが、紆余曲折あってまたハーポとソフィアの仲が深まるという、よく言えばブレンドファミリーですがいわゆるスワッピングが生まれます。
ここですごいのが、セリーは確かに幼少期から屈服して生きてきたから従順な女性として描かれているのですが、人からは優しい慈愛の人と捉えられていて継子ハーポとの仲は良く、彼の妻ソフィアおも関係良好。
ミスターとかつて恋人同士だったシュグが有名な歌手として故郷に戻り、ミスターとセリーの家に転がり込み奇妙な関係が続くのですが、セリーはシュグと女性同士の友情以上に強い絆を築いていきます。
そして、ミスターとも。
セリーは彼のよき理解者になるのです。
確かにセリーはいろいろなものを奪われ続け、抑えつけられてきました。
中にはミスターとの関係のように、長い年月をかけて素晴らしい人間関係を作り上げることが出来ていますが、過程をみると決して良いことだけではありません。
辛い中でもセリーは神に祈り続け、いつかネティと再会する日が来ると信じ続けます。
理不尽な中でも耐え抜き、今出来ることをやりきった先に、セリーは素晴らしい未来を手にするのです。
自分の足で立つセリーの静かな強さに心を打たれました。
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