Author: Daniel P Mannix
翻訳版の有無: なし
映像化: あり「きつねと猟犬」「きつねと猟犬2 トッドとコッパーの大冒険」
英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了出来るレベル)
この本を読むと、「自然界や変化への対応の厳しさが学べる」というベネフィットを得られます。
洋書を読む時に文学ものを選ぶ際、私はディズニー作品が参考にした作品を随分と選ぶようにしていることに気づきました。
映像作品と書物の比較はわかりやすいもので、違いを比べるだけなので手に取りやすいです。
アンデルセンやグリム童話など、広く知られる児童向け作品が多くディズニーに使われる中、本作「きつねと猟犬」は自然界の厳しさと変化に対する対応の厳しさを意識させられる大人向けの作品なのではと感じました。
ディズニー作品の「きつねと猟犬」はまだ観たことがないのですが、そのパッケージは狐と猟犬が笑顔で映っているので、違う種族同士の友情を描いているのだと予想が出来ました。
ですが、よく考えると狐と猟犬ですから、いうなれば敵同士。
野生の狐は家畜を狙う害獣ですし、犬がその狐を狩る役目を担う立場なら、本作を手にした時、結末は容易に予想出来ました。
経験値のある猟犬のコッパー(Copper)と、子供時代に人間の世話になったことがある狐のトッド(Tod)は、コッパーと同じ猟犬のチーフ(Chief)の死により敵対関係に。
チーフの死を引き起こしたトッドは、チーフを気に入り大事にしてきたマスターの怒りを買ったのです。
このシンプルなプロットから引き起こされる追跡劇は、長い年月をかけ、コッパーとその主人のマスターが住む環境の変化を交えながら行われていきます。
月日が流れるのですから、自然界に住むトッドは当然青年の狐としての成熟期を迎え、番を得て子を授かります。
コッパーは人間の傍に忠実に仕え、与えられた役目を遂行するため存分に力を発揮します。
トッドは生き残るために捕食する場面が描かれますし、人間の手による非情なやり口を経験します。
トッドは生き残る過酷さを象徴しています。
一方のコッパーはマスターへの従順さを表すことから、変化に対応することの難しさを表す存在として描かれました。
月日が流れることからマスターは年老いて、周囲から疎まれる存在として扱われるようになりました。
彼らが住む環境も近代化が目立ち始め、猟師の数も減っていく厳しい環境下に立たされます。
コッパーは飼い犬であり、狩りをするよう仕込まれていますから、狩り以外で活躍するすべを知りません。
狩りが出来ないとフラストレーションを溜めていくコッパーは、やがて孤立していくマスターの孤独と比例するようでした。
この作品の主人公は、あくまでトッド。
なので、彼の視点だけで物語を捉えると、人間に追われる立場ながら自然界での過酷な経験を積む狐の生涯を見ることができます。
ですが大きな目で見ると、そのトッドに大きな影響を及ぼす人間界の住人マスターとコッパーも世の中の変化に巻き込まれていきます。
自分達の敵であるトッドを追う姿と、自分たちの生業である狐狩りが徐々に出来なくなっていく環境の変化に翻弄される姿に心を動かされます。
私達も生きていくうえで、幾度となく環境の変化にさらされます。
一度流れが出来ると、かつての流れに戻すことは難しく、むしろ今の時代の流れ、物事の流れに身を任せた方が生きやすい場合が往々にしてあります。
私も変化に対応できずに苦しんだことがありましたので、この作品でコッパーとマスターの苦しみに親近感を湧きました。
苦しみながらも変化に対応した先に、新しい成長と「この方向性も案外いいかも」という発見を得られるかもしれません。
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