Author: Ros Barber
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)
この本を読むと、「陰謀とか、もしもの話を楽しめる」というベネフィットを得られます。
以前の私の洋書普及活動に、「クリストファー・マーロウをフォーカスする」というものがありました。
ウィリアム・シェイクスピアと同年代の作家で、彼に多大な影響を与えたスキャンダラスな文学者にマーロウの名前があります。
少しひねくれた私は有名どころのシェイクスピアより、マーロウに惹かれてぜひ調べたい気持ちがあり、当時はこの活動を取り入れました。
その時は、マーロウの作品の「フォースタス博士」を読みました。
本作は、もう十年以上も前に購入し自分のKindleで再度読まれる日を待っていた書籍でしたが、この活動を立ち上げた時に触れています。
触れて終わりまで読み進められなかったのですが、今回改めて読了いたしました。
いや、やはり面白かった。
詩(poetry)の書き方の一種にblank verseというのがあるらしいのですが、そのフォーマットで書き進められた本作は、クリストファー・マーロウが詩人として活躍し、神を信じぬ存在として政府から目を付けられ(=atheistは裁判にかけられる危険があった)、やがてマーロウとして死を選び代わりの姿で詩人として活躍する一生を描いた作品です。
マーロウが選んだ名前はウィリアム・シェイクスピアだから、ドキドキして十年以上年の若い私はこの作品を迷わず購入しました 笑
そういえば、学生時代に文学書籍を紹介する授業があったのですが、当時の同級生はシェイクスピアを調べたい割合が多かったです。
大学時代に「オセロ」を読みましたが、これも面白かった。
シェイクスピアもいずれ調べてみたい。
エリザベス一世の御世、彼女に支持されて活躍した詩人の一人でしたが、マーロウは宮廷のスパイだった噂もあり、だいぶスキャンダラスな生業の男性。
そんなことだから、自分の死を偽造したという仮説で本作は進みます。
流浪の身にもなるし、元々文学者として活躍するも、後ろ盾も必要だからパトロンも持つマーロウ。
本作ではバイセクシャルとして描かれるマーロウですが、当時の情勢でいわゆるLGBTQ+がオープンになることを許していないので、彼は秘密の恋人との逢瀬はしっかり秘密裏に進めます。
相手も最終的には妻が欲しいという願いからマーロウの元から去りますが、マーロウの最後のエピソードも世間に染まる生活を望むもの。
「恋愛と結婚は別物」なんてよく聞きますが、まさにその選択をするのがマーロウと彼のパトロンでした。
心は割り切れなくとも、行動は割り切っていたみたいですね。
本作を読んで感じたのは、宗教と王位継承の情勢が一人の市民の人生にだいぶ影響を与えたこと。
史実ではエリザベス一世のスパイだったとされるマーロウは、つまりエリザベス女王と彼女の後継者争いが絡んでくることから命の危機に遭います。
さらに先述の通り、バイセクシャルな描写があることからマーロウはそれだけでも訴えられてもおかしくない立場にいます。
生き延びるためにはあの手この手で策を練らないといけなかったのですね。
何ともスリリングな生き方。
史実では酒場でのいざこざで命を落とすマーロウですが、本作ではそのいざこざで命を奪う側にマーロウがいて、人を殺めてしまった友人の人生を狂わせることになります。
詩を書く生業と国家に尽くす狭間に生きるマーロウの流浪の人生に、目が離せません。
本作はフィクションなので、尚更「もしも」の内容が読者をワクワクさせます。
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