Author: Michael Ende
翻訳版の有無: あり。「はてしない物語」
映像化: あり「ネバーエンディング・ストーリー」「ネバーエンディング・ストーリー第2章」「ネバーエンディング・ストーリー3」
英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)
この本は、こんな人達にオススメします。
・自分ではない誰かになりたい人
・自分を癒したい人
・英雄に憧れを持つ人
今回の洋書はInstagramのライブ配信Book Cafeで紹介しました。
いつもと違い、作品を紹介する以外に明確なテーマを決めてプレゼンしてみました。
そのテーマは「あなたが乗り越えた苦手、恐怖はなんですか?」
私は自己開示すること、事前準備をせずに本番に臨むこと、それから間違うことを恐れること。
事前にアンケートを取って、得た回答からトークを展開することもやってみました。
「ネバーエンディング・ストーリー」あるいは「はてしない物語」は、子供の頃から存在を知っていました。
初めて認識したのは映画で、その時に受けた第一印象からで、正直あまり良い第一印象であはありませんでした。
意味が分からないというのが感想です。
子供の頃に見た映画だったため、正しく理解出来なかったのは仕方ないかもしれません。
また、学生時代の友人の一人は作者ミヒャエル・エンデの別作品「モモ」が好きで、彼の作品をよく紹介してくれたのを覚えています。
それでも興味がさほど湧かなかったのは、やはり第一印象の悪さが原因でしょう。
その後、二十歳の頃に、海外生活を送っていた時分の友人から映画の紹介を受けて、DVDを借りたことで再度この作品は私の人生に入ってきました。
その時に、躊躇しながらも再度挑戦して、今度は楽しむことが出来た作品になりました。
更に時を経て、友人からぜひBook Cafeで紹介してほしいと推薦されたのが、本作品でした。
正直に言うと、こういった過去から気乗りしなかったのですが、実際に本を読むと、本はのめり込んでいきました。
一番の理由は、主人公バスチアン(Bastian)の心の成長に共感できたからでしょう。
主人公の心の成長、というのは物語にありきたりな展開なのですが、彼が作中で見せる成長のスタートはネガティブからでした。
本作品をオススメしたい人の一つ「自分ではない誰かになりたい人」は、特にバスチアンを意識しました。
作品の冒頭で、彼はいじめられっ子から逃れた本屋さんに逃げ込むシーンがあります。
彼は母を亡くしたばかりで、最愛のパートナーを失ったバスチアンの父は悲しみから自分の内側に籠ってしまいます。
このことで、父親から注目を受けなくなったことからバスチアンは自身がいらない子だと思うようになっていきます。
いじめとネグレクト。
物語の当初、バスチアンの自己肯定感はかなり低い状態でした。
そのバスチアンは、「ネバーエンディング・ストーリー」と出会い、作中に登場する少年アトレイユ(Atreyu)が作品の中で冒険をし、英雄になっていく姿を応援することで、バスチアンは作品の一部になっていきます。
この作品を説明すると、現代社会に生きる少年が一冊の本と出会い、その本の世界に魅了されて一部になっていく、というファンタジーです。
本の世界に入り込むという、非現実的な設定のこの作品は、バスチアンがエキストラ級でしかなかった立ち位置から救世主となり、英雄化して自分ではない誰かになっていくという部分と、誰でもない誰かになった後本来の自分を取り戻す部分の二部構成です。
自分を変えたい、誰かかっこいい人になりたい、という気持ちは現代に生きる私達も納得が出来る、共感出来る気持ちです。
現実世界で認められないバスチアンは、本の中で英雄としてはやし立てられ、いつしか本来の自分を見失っていく姿が後半に描かれ、読者の気持ちを離さない重要な描写が描かれます。
本の世界の中に入ったのだから、いずれは出てくる時が来る。
その時を迎えたバスチアンの心情はいかがだったのか。
日本ではよく「ネバーエンディング・ストーリー」の第一部がテレビで放送されるため、私は、映画を楽しむならぜひ第一部と第二部をセットで観ることをオススメします。
ただ、この作品を推薦するなら断然本です。
自分が受けた第一印象で書いた通り、映画は、本の世界をよく描き切ってはいないかなと感じます。
もちろん映像化されているものから入ればイメージしやすいのですが、純粋に作品の良さを知りたければ本をオススメします。
それだけ映画と本、受ける印象が違うからです。
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