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執筆者の写真Masumi

Book Report: The Perfect Marriage

Author: Jeneva Rose

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)



この本を読むと、「完璧の定義を考えさせてくれる」というベネフィットを得られます。


人間が作るものに完璧はない。

人間は不完全な生き物である。

という言葉はいくつかの文献で目にしたことがあり、信仰でも神が完璧であれば人間は完璧にほど遠い生物だと説く文献をよく目にしてきました。

 

でも私たちは完璧を求めたくなる生き物なのです。

そのことにフォーカスした作品が本作。

私が受講する英語のe-learningの一つにブッククラブがあり、今回本作が課題図書になっていたことで読書に挑戦しました。

(このブッククラブ自体は、スケジュールが合わずに参加見合わせました。)

 

主人公のサラは弁護士。

詳しく言うと、何か事件が発生した場合に被告側につく被告側弁護人(defense attorney)という職業についていて、それも敏腕です。

彼女は夫で作家のアダムと結婚十年の夫婦で、いわゆる子なし夫婦(DINKS: double income no kids)です。

子供が欲しくないサラと、実は子供を願うアダムとの間に少しの隙間風があり、またアダムの作家としてのキャリアも現在暗礁に乗り上げている状態ですが、この二つの問題がなければ仲睦まじい完璧ともいえる夫婦でした。

ただ、上記の問題を二人は中々向き合わず、特にアダムのキャリアとサラの仕事振りとでギャップがあり、結婚十年の記念日もサラは仕事にいそしむのです。

その穴埋めをするようにサラはアダムにプレゼントをし、結婚記念日に不在となることを謝りやり過ごしますが、アダムは二人の第二の自宅であり自身の仕事場と使うレイクハウス(池のそばに建てた家で日常を逃れる空間として使われることがある)に不倫相手のケリーを連れ込みます。

ケリーも自身の夫婦関係に不満があるようで、アダムとケリーはそれぞれのパートナーの一番になれない傷を癒すように、寄り添う不倫関係を一年前から続けてきました。

アダム自身、家庭ある身で他の女性と関係を持つことに当然罪悪感もあるし、サラへの愛情は揺るぎないものなのですが、ケリーから得られる癒しのような包み込む愛情をサラから感じられず、寂しさを募らせています。

そんなことを思いながら、自身の結婚記念日をアダムはケリーと過ごし、翌日清掃員が来る前に帰るよう、ケリーに置手紙を残して深夜に自宅に戻ったのですが、翌日アダムは突然警察に容疑者として連行されることに。

なんとケリーはレイクハウスで亡くなっていたのです。

それも、誰かから複数回も刃物で刺され、変わり果てた姿で。

このニュースは当然サラの耳にも入ります。

不貞の夫といわゆるサレ妻という形ですが、職業上、サラは理性的に被告側弁護人として容疑者アダムの無実を証言すべく、法廷に立つのです。

 

この作品は、本当に様々な角度から質問を与えてくれた作品でした。

特にパートナーシップに関する問いかけが顕著ですね。

相手の不貞を許せるか、という明らかな事柄はもちろん、二人の問題であった「臭い物に蓋をした状態」という事柄にどう向き合うべきだったのか、という質問。

不倫に対する質問も当然ありますし、大切な人の一番になれない虚しさを埋めるように始まったアダムとケリーの関係には感情を動かされます。

結婚という契約形式に対し、それを侵害する=不倫という形式の上では、確かに不倫は悪のように見えます。

一方でそれは理性であり、人間の感情は白黒はっきりつけられないというのも理解できます。

サラとアダムの夫婦も一見完璧のようですが、彼ら自身が「臭い物」に向き合わないという不健康な結婚生活を送っていました。

例えばアダムは子供を持つことを諦めていません。

でもそれをサラに伝えて、とことん話し合うということはしていません。

(実は、サラが「そろそろ子どもを考えようか」ということを告げるシーンがあり、人の親になることを本格的に考え始めるのですが、サラがその気になったから出た発言で、いわゆる棚ぼたです。)

この夫婦の外野の存在も、夫婦生活を曇らせる要因になっているのですが、二人で向き合っているという感じではなく何とか外野の気を逸らそうとしている印象です。

人の心がもろに出る人間関係なので、理性的にこなすことは出来ないものですが、何とか理想な関係を作ろうと努力するもの。

不完全でも、完璧にほど遠くても、人間関係の構築をするものです。

サラとアダムが完璧と思い描く夫婦関係と、実際の自分たちの夫婦関係とのギャップを見て見ぬふりをした結果を描いたのが本作かと思っています。

 

それにしても、ケリーを取り巻く環境も裏の裏がたくさんあり、サラが所属する弁護士仲間たちの確執もあって面白いし、見逃せないのはラストの展開で、容疑者アダムに対する判決の末どうなったかという展開に驚かされました。

課題図書とされただけあって、読みやすいうえ読みごたえもある作品です。



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