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Book Report: The Ruby Red Trilogy

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 2022年10月11日
  • 読了時間: 6分

更新日:2024年12月17日

Author: Kerstin Gier

翻訳版の有無: あり。「紅玉は終わりにして始まり」「青玉は光り輝く」「比類なき翠玉」

映像化: あり「時間旅行者の系譜」

英語レベル: Advanceレベル(洋書を一年間に1冊読了出来る)


この本は、こんな人達にオススメします。

・時間を越えて行き来することに興味がある人

・自身を歴女と言える人(男性なら歴男なのか)

・降って湧いた新しいミッションに自分の時間を費やしても良いと思える人


どんな人間に対しても、平等に与えられているものがあります。

それが生死。

そして時間。

今回紹介するのは、タイムトラベルの能力を得た主人公の話です。


主人公のグウェン(Gwen)は、弟ニック、妹キャロライン、母グレイスと平凡な暮らしをしていました。

父が病気で亡くなったことをきっかけに、伯母グレンダ、従兄弟シャーロット、祖母レディ・アリスタ、祖母の義理の妹のマディーが住むお屋敷に移り住み、大家族になったくらい、それ以外、彼女の生活は慎ましいものでした。

自分と同い年のシャーロットのために、長年伯母が母に張り合ってきたことくらいしか窮屈なことはなく、学校生活も親友のレスリーがいるお蔭で楽しいものです。

生まれつき幽霊が見える性質、という特殊能力もありますが、シャーロットからちょっと変わった従兄弟と思われるくらいで、グウェンは気にする様子もありませんでした。

ある日、過去にタイムスリップするまでは。


その日からグウェンの生活は変わります。

実は、ファミリーツリーを遡るとグウェンの家計はタイムトラベル出来る血筋にあり、彼らの祖となったサンジェルマン伯爵(Count Saint-Germain)の予言によると、誕生日からシャーロットがタイムトラベルするはずでした。

シャーロットはこれまでタイムトラベルしてもいいよう、歴史だけではなく各時代の俗世にも通じ、ダンスや護衛術など学んでいました。

タイムスリップ後に果たすべく使命を理解し、ガーディアンと呼ばれる面々が所属する組織の中で長い時間過ごしていたシャーロットは、自身の使命を理解し、組織の面々からの信頼も厚かったのです。

ところが、実際にタイムスリップしたのはグウェン。

想定外の出来事にてんやわんやする家族の中、母グレイスは顔面蒼白の中、落ち着き払ってタイムスリップするメンバーを統率するリーダー、ファルク・ド・ヴィリエと対面し、対応する。

グウェンをタイムトラベルによる使命に近付けたくないグレイスですが、ファルク含めガーディアンに属するメンバーはそれを認めず、グウェンは使命に巻き込まれていきます。

その最中に出会った、同じくタイムトラベルの能力を持ったギデオン・ド・ヴィリエと共に、創立者サンジェルマン伯爵が解こうとした秘密を紐解いていきます。


平凡な生活をしていた人物が、ある日突然ミッションを与えられ、使命にまみれた生活を送ることになる物語は冒険ものに属する小説の予定調和です。

どこにでもある大筋ですが、主人公がタイムトラベルするお話はまた面白いです。

過去にタイムトラベル物では「Time Traveler's Wife」(きみがぼくを見つけた日)でも読んでいますが、こちらは完全に恋愛小説であり、タイムトラベルをコントロール出来ない男性が主人公でした。

本作品は、クロノグラフという時計型のデバイスを使ってタイムトラベルをコントロールする設定であり、凝っているなと感じました。


主人公のグウェンも味のあるキャラクターでいいですね。

同い年で、優等生で、美人で、特殊能力を開花すると期待されるシャーロットと常々比較されて育った割に自己肯定感がそれほど低くなく、突如として降り注いだタイムトラベルの使命も反発しつつ自分なりに対応するしなやかさがあります。

これまでグウェンはタイムトラベルに関して時間を費やすことがなかったので、いろいろ思うことがあったり、シャーロットと比較されて出来損ない扱いされる不当さに反発する姿もあり、タッグを組むギデオンからは戸惑われたり、「シャーロットと君は全く違う」といったように驚かれますが、反発しながらも自分の考えで動くグウェンの姿はガーディアンの面々にも彼女個人がどんな性格の女性なのか、はっきり映ります。

おそらく優等生のシャーロットはしっかり指示を聞く、いい子だったのでしょう。

ある種、都合のよい子だったのかもしれません。

一方、突然巻き込まれたグウェンは環境の変化に反発ばかり。

当初は嫌々ながら対応していますが、祖のサンジェルマン伯爵が残した秘密や、かつて仲間であったポールとルーシーに盗まれた第一のクロノグラフの存在が明らかになると、グウェンも解決のため動いていきます。

ポールは、ファルクの弟で、ギデオンの親戚にあたります。

ルーシーは、グウェンとグレンダ伯母の兄にあたる人の娘で、たどるとグウェンとは従兄弟にあたります。

グウェンは親戚と対立することに。

クロノグラフの件は、ポールとルーシーに盗まれたものに対して、グウェン含むガーディアン達は第二のクロノグラフを使用しています。

タイムトラベル出来るメンバーは、グウェンとギデオンを含めて12人いて、彼らの血を使うことでサンジェルマン伯爵が残した秘密が明らかになると言われていて、第一のクロノグラフと第二のクロノグラフを使い、それぞれ秘密の破壊と解明を進めることになります。

どちらが先に目的を達成するか、というのがグウェンを悩ませる事柄になります。


さて、シャーロットの替わりとなったグウェンですが、タイムトラベルの能力のほかに向き合うのがギデオンとの恋です。

タイムトラベルのパートナーとしてギデオンと行動するはずだったシャーロットは、長い間傍にいてギデオンに恋をしていました。

その立場がグウェンになり替わり、シャーロットは面白くありません。

グウェンも、優等生シャーロットと比較されることにストレスを溜めていきます。

ギデオンの態度も、シャーロットに想いがあるように見えるし、一方でグウェンにも気があるようにも見えるし、何とも煮え切りません。

使命であるタイムトラベルはしっかり対応する好青年なんですけど、彼も非情になりきれないので、どちらにも優しいし。

そこがギデオンのいいところなんですけど。


全体的に話が進むテンポがよく、脇を固めるキャラクターもよく、楽しく読める作品になっています。

冒険、恋愛、家族愛、などテーマが多いためキャラクターも多いしプロットも複雑ですが、三冊によくまとまっています。




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