翻訳版の有無: あり。「続ジャングル・ブック」
映像化: なし
英語レベル: Advanceレベル(洋書を一年間に1冊読了出来る)
この本を読むと、「いずれ自分の居場所は自分の力で見つけられる」というベネフィットを得られます。
ジャングル・ブックは主人公となる人間モーグリが関わるエピソードと、全く登場しない、動物を主人公としたエピソードが混ざった短編集で、今回の続編も同じ構成でした。
前回は、モーグリと彼の宿敵である虎シア・カーンとの対決がメインストーリーで、過去と決別がメインでした。
人間界と動物界、どちらを選ぶかという決断をするモーグリは、動物界を選びました。
今回のエピソードでは、シア・カーン対決前にあった干ばつの話、数々の冒険、そして成長した青年モーグリが再度自分の居場所の選択を迫られるという物語が含まれています。
さて、居場所探しがテーマとなる本作ですが、それが迫られた理由というのが、とどのつまりモーグリは子孫をどう残すかという点にあるのではと考えます。
虎シア・カーンにさらわれて、ジャングルで動物達の世界で育ったモーグリですが、宿敵との対決を決着させても片付かない問題があり、今あげた子孫の残し方が最大の課題として残るのです。
どんなファンタジーでも、ノンフィクションでも、さすがに動物と人間の交配は禁忌。
(倫理的にも法律的にもNGです。たとえフィクションでも、私も読みたくないです。)
更に、モーグリが成長して青年になったということは、彼を取り巻く動物達も年を重ねるし、だんだん周りからいなくなりますので、仲間が必要になってくる。
モーグリが人間界に戻ることが、一番自然な形で彼の人生が決着するのだと考えます。
シア・カーンとの対決、それ以外のエピソードの中で、モーグリは自分で考えて動物達に向き合います。
前作サルの群れとの対決、本作ドール(dhole)というイヌ科の動物との対決の時も、仲間達と協力してジャングルのために動きます。
これは、モーグリはこの時点で動物界側の立場で動いています。
彼はまだ動物界が彼の居場所だと捉えています。
やがて成長したある日、彼の動物界への感じ方に変化があり、人間界に戻る決断をするのですが、彼は自分の体と心の変化を受け入れた上でその決断に至るのです。
確かに始まりは、シア・カーンによって自分が生きる環境を決めさせられました。
次も確かに、体と心の変化によって決断せざるを得ない状況にいました。
ですが、モーグリは細やかに考えて自分の居場所を見つけていきます。
その新たな居場所に入っても、世を拗ねることがない彼のまっすぐな姿勢は、彼が険しい動物界を異質な存在でありながら生き抜いてこられた秘訣とも言って良いでしょう。
私達も様々な理由で自分の居場所が揺らぐ時があります。
人の手によって居場所を取り上げられる時、つらすぎて私達は世を拗ねることもあります。
第三者の手により生きる場所を奪われ、振り回されたモーグリですが、最後はきちんと自分の手で探し当てて、その新たな居場所に馴染もうとします。
その姿勢が、この険しい環境の中に生きる明るい主人公として存在しているのだと思います。
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