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執筆者の写真Masumi

Book Report: The Secret Garden

Author: Frances Hodgson Burnett

翻訳版の有無: あり。「ひみつのはなぞの」

映像化: あり「秘密の花園」

英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)



この本は、こんな人達にオススメします。

・引っ越したばかりで新しい環境に馴染んでいない人

・これまで思い込みにまみれて生きていた人

・心機一転したいから背中を押してほしい人


幼少期にかけられた何気ない言葉から、生涯引きずり続けて悩みまくっている人って、いると思います。

私ももちろん親から(特に母親から)いらないプレゼントを貰っています。

でも、そんな母も、自分の母親から不要な言葉のプレゼントを受け取っていて、そしてそれと正面切って戦っています。

親だったり、上の立場になって、相手のためを思ってかけた言葉や、意図せず何気なくかけた言葉が思わぬ形で相手の人生にネガティブに効いてしまうことってあります。

あ、私は両親からかけられた言葉に対し、今は恨まずにいられます。

それはやはり、同じように娘の立場で親にかけられた言葉と戦う母の姿を見ているからです。

うん、自分の宿題だからね。

それを受けて、現実を作っているのは自分だから。


で、この独白が今回の洋書とどう繋がるかというと、この作品に登場する一人、コリン(Colin)は大人達からかけられた言葉のために、人生を悲観して十年間生きてきたという壮絶なエピソードを目の当たりにしたからです。

主人公は、このコリンの従妹にあたるメアリー・レノックス(Mary Lennox)で、コリンと同い年の少女です。

彼女はインドに駐在するイギリス人の両親の元に生まれたのですが、両親から疎まれて育ったという過去があります。

現地のメイドに預けられ、自分の言うとおりに動く現地人としか関りがなく、かつ現地で流行り病により両親が犠牲になってしまう。

イギリスの伯父の元に預けられることになったメアリーは、環境の違い以上に、彼女の存在が無視され続けたために、ひどく気難しい子供に育ちました。

イギリスに来ても、伯父は愛情ではなく責任感から彼女を引き取ったので、愛情らしい愛情を受けず、メアリーは不貞腐れたまま。

この伯父のクレイヴァン氏(Mr. Archibald Craven)も、気難しいキャラクター。

十年前に息子コリンが生まれた年に妻を亡くして悲嘆にくれたほか、自身は背中に障がいを持っているようなのですが、息子が自分と同じように体に障がいを持つのではと心配したことで、自分の息子が強く生きられないのではと将来を悲観してしまいました。

その悲しみがメイドや従者達に伝わり、コリンも周りの大人達からそう言われて育ったものだから、家じゅうが悲しみに包まれた状態になっていました。


そんな家に預けられたメアリーですが、彼女の気難しい態度をそのまま受け入れてくれたのが、彼女に付いた従者マーサ(Martha Sowesby)でした。

ヨークシャー地方出身で訛の強いマーサですが、明るい気質の女性で、メアリーの気難しさにも負けません。

彼女と触れ合ううちに、やがてメアリーは最初の心の雪解けを経験します。

家の中にいても何もすることのない彼女は、次第に外に出るようになり、そこで庭師の一人であるベン(Ben Wetherstaff)と出会います。

彼もヨークシャー訛の強い老人で、メアリー同様に気難しいのですが、一羽のコマドリ(robin)がベンに懐く様子を見たメアリーは、次第にベンと交流を深めていくようになります。

これが次の心の雪解けでした。

やがて、メアリーは、病弱故に部屋から一歩も出ない、やせっぽっちの従弟コリンと出会い、彼とともに生き生きした子供達に変わっていくのです。


メアリーもコリンも共通するのは、その存在を否定され続けてきたことにより、生き生きした姿を失っていました。

親に無視され続けた子、そして病弱を理由に生きる可能性を否定された子。

それがメアリーとコリンでした。

彼らを活発な子供達へ戻したのはマーサはじめ彼女の家族(弟のディコンがかなり大きな役割を果たします)、そしてタイトルにもなっている秘密の花園でした。

時の止まったままの花園に生命を与え、生き返らせる過程を経て、その力を吸うようにメアリーとコリンも本来の気性を復活させます。


本作品を読んで気づいたのは、大人の言葉がいかに子供へ影響を与えるか。

大人達の思い込みによって存在を長らく否定されたメアリーとコリンですが、子供達はまた大人達によって生命を与えられ、自分を取り戻していきます。

メアリーはマーサや周りの大人達により、コリンはメアリーにより、そして秘密の花園は二人により生き生きした姿に生まれ変わります。


生きることについて他者がそのきっかけを与えていますが、生きると決めたのはメアリーとコリン自身。

どんなにたくさんの不要なプレゼントを周囲から受け取っても、自分の運命を自分で決めて切り開くことが出来る。

それを教えてくれる、とてもよい作品です。


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