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執筆者の写真Masumi

Book Report: The Sheep-Pig

更新日:2022年6月5日

Author: Dick King-Smith

翻訳版の有無: あり。邦題「子ブタ シープピッグ」

映像化: あり「ベイブ」「ベイブ都会へ行く」

英語レベル: Basicレベル(洋書に一日3分向き合える)


この本は、こんな人達にオススメします。

・やれば出来る、を信じている人

・先入観をうち破った人を応援したい人

・何事も一生懸命に取り組む人


豚を主人公にした作品は洋書に限らず数多く存在します。

日本で有名なのはジブリ作品「紅の豚」。

同じ映画のくくりでなら、洋画は「ベイブ」が有名かと思います。

本作は、「ベイブ」の原作です。

以前に紹介した「Charlotte's Web/シャーロットのおくりもの」も豚ウィルバーが主人公で、あれは異種族である蜘蛛シャーロットとウィルバーの交流を描きながら命の尊さを説く作品でした。

本作The Sheep-Pigも同様に、牧場にやってきた子豚はいずれソーセージかベーコンか、という人間の思惑の元にありますが、「シャーロットのおくりもの」と違い、早い段階で家畜としての運命から逃れるという特徴があります。


「シャーロットのおくりもの」は、タイトルにある通りシャーロットの蜘蛛の糸webがキーポイントとなり、子豚のウィルバーの命運を握る役割をする物語になるため、主人公はウィルバーでありながらシャーロットの行動に大きく左右されることになる作品でした。

一方、本作は子豚ベイブ自身の行動と性格によって、運命を開いていく作品です。

この違いにより、物語が示す明るさに大きな差があると言えます。

本作は、とにかく明るかった!

タイトルの通り、本作はsheep dog(牧羊犬)ならぬsheep pig(牧羊豚)がテーマです。

ベイブがやってきた牧場では羊を飼育していて、それを管理する牧羊犬がコリー犬のフライ(Fly)です。

フライには生まれたばかりの子犬がおり、当初母親を恋しがったベイブを哀れに思ったフライがベイブも一緒に世話してあげるのです。

それがきっかけで、ベイブはフライのような行動をしていき、やがて牧羊犬ならぬ牧羊豚を目指すようになります。


一見してファンタジーな設定ですが、豚が牧羊犬と同じ役割を果たせると信じて行動したキャラクターが本作品には複数います。

ベイブ、フライ、そして牧場主であるホゲットさん(Mr. Hogget)です。

母親代わりのフライにくっついて歩くため、ベイブは当然自分は牧羊豚になれると信じていますし、その意思の強さから真摯な姿勢で羊達に向き合います。

そうすることで知ったのは、家畜動物の間で抱かれている格差です。

犬の視点では羊や豚はばか。

飼い主に従って羊を管理する立場上、フライは自身を羊達へ命令する立場にあると考えていて、また会話の遅さから羊はばかだと思っています。

当初は豚もばかだと考えていましたが、ベイブと行動を共にすることからその考えは徐々に消えていきました。

羊の視点では犬をwolf(狼)と称し、命令するばかりで羊を丁寧に扱わないマナー知らずという目で見ています。

どちらにも属さず、丁寧で真摯な姿勢で羊と向き合ったことから、ベイブは羊達の信頼を勝ち取っていくのです。

フライはベイブの母親代わりであることから、息子同様のベイブは牧羊犬のような役割を果たせると信じています。

豚だから、という偏見なく出来ると信じているのは、ベイブのことをよく理解する立場にいるからでしょう。

そしてホゲットさんは、牧羊犬の真似事をする子豚を珍しく見ていましたが、次第に羊を指揮する子豚の姿勢が正確であることに気付き、牧羊犬ならぬ牧羊豚にしても恥ずかしくない素質があると見抜きます。


この様子以外にも事件があり、そこでのベイブの働きぶりが買われたことで、ベイブはソーセージやベーコンになる運命から逃れられるのですが、ここで気付かされるのは「主体性の有無」でした。

先述した文章からもわかる通り、豚の役割は人間の命の糧になること。

本来なら、ベイブは食べられる運命にあります。

「シャーロットのおくりもの」の子豚ウィルバーも同じ運命にあります。

もちろん物語のテーマの違いや、その運命にあることをウィルバーとベイブが理解しているかという違いもありますが(本ではベイブは知りません。映画はその運命を知る描写がありました)、ソーセージやベーコンにされる運命の元、牧場の中でウィルバーとベイブがどう過ごしたかという点の違いが作品を取り巻く空気の明るさにまで違いを出すことに驚きました。

ここまで書くとお分かりの通り「シャーロットのおくりもの」でのウィルバーは、蜘蛛のシャーロットの助けを受けます。

なので、シャーロットが手助けしたことで周囲の人間がどう反応するか、緊張感を持って読める作品でした。

一方、本作のベイブは母親代わりのフライのように働きたいと考え、そう行動したことでホゲットさんの目に留まるのです。

そうするとホゲットさんだけでなく、読者の目もベイブの行動に視点が行き、彼は次にどう行動するのかなと気になります。

相手に自分の運命を委ねたウィルバーと、自分で運命を切り開いたベイブ。

主人公が子豚というだけで比較対象にしてしまいましたが、読了後、やたら「シャーロットのおくりもの」はしんみりして、やたら「シープピッグ」は気持ちが晴れやかなのはなぜかな、と考えた時に、主人公達の立ち居振る舞いかなと思ったらなんか腑に落ちました。


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