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Book Report: The Spiderwick Chronicles

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 2022年12月29日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年12月17日


Author: Tony DiTerlizzi & Holly Black

翻訳版の有無: あり。「スパイダーウィック家の謎」

映像化: あり「スパイダーウィックの謎」

英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)



この本は、こんな人達にオススメします。

・家族が原因で環境が変わった人

・自分の弱さが目について辛い人

・ファミリーツリーに興味がある人


本作品のレビューを書こうと準備している時に、私が洋書と携わる時、意外と映像作品が洋書そのものより先に関わっているなと、改めて気付きました。

洋書が原作になっていることを知らないまま映画を観てきたんだなと、今更ながら実感しています。

この作品に出会ったのも、例に漏れず映画が先でした。

当時、主人公の少年ジャレッド(Jared)とその双子の兄弟サイモン(Simon)を演じる俳優さんが好きで、観た作品の一つです。

フレディ・ハイモア氏、当時好きでした。

今も好きよ、もちろん。

「ネバーランド」「チャーリーとチョコレート工場」とか好きですね。


そのハイモア氏が出演した「スパイダーウィックの謎」の原作である、本作The Spiderwick Chroniclesは、ファンタジーと家族愛をテーマにした作品です。

家族愛と言っても、今一緒にいる家族に対し、お互いが愛情を向け合うような常にポジティブな雰囲気を醸し出す作品ではなく。

主人公ジャレッドとその兄弟は、両親の離婚を通じて傷ついた心を癒していく過程を描いています。

ジャレッドの兄弟はそれぞれの方法で両親の離婚を乗り越えていますが、ジャレッドはおそらく、兄弟に比べてまだ心の傷が癒えず、自分達から離れた父親がまた戻ってきてくれることを心の隅っこで祈っています。

母親側について引っ越したジャレッド、サイモン、二人の姉のマロリー(Mallory)は、彼らの親戚の屋敷にやってきます。

古びた大きな屋敷を探索するうちに、隠し部屋をみつけ、三人は親戚の一人ルシンダ(Lucinda)の父アーサー・スパイダーウィック(Arthur Spiderwick)が書き記した本を見つけます。

それは妖精達、ゴブリン達、など人間の目に見えない不思議な生き物たちの秘密を書き記した本だったのです。

本の通りに解読し、やがて妖精達の姿を目にする三兄弟。

スパイダーウィックが記した秘密を解き明かしていきます。


現代の生活とファンタジーの世界が融合された小説は数ありますが、この作品が頭一つ抜きんでているところを挙げるとしたら、兄弟三人が協力してピンチを切り抜けること、そして家族の秘密を主人公達が受け入れること。

アーサー・スパイダーウィックはジャレッド達にとって、遠い親戚にあたるにも関わらず、彼らの屋敷に住むことになったがために異世界の存在と関わることになる三兄弟。

そこを「えっ?こんなファンタジーなこと、信じないし」なんて拒絶する人が兄弟にはいません。

もちろん、初めはサイモンもマロリーも抵抗しますけど、話の早い段階でジャレッドを理解して協力して向き合っていきます。

しかも家につく妖精、ブラウニー(house brownie)と呼ばれる存在が見えるようになった彼らは、異世界の存在を認めざるを得なくなりますが。

異世界の存在の中にも危害を加える存在もいて、その秘密がアーサー・スパイダーウィックの本に記載されているが故に、やがて三人は異世界の存在から命を狙われます。

異世界の存在と人間は、本来交わるべきではないですが、その本が存在するがため、可能になってしまうのです。


妖精やゴブリンといった異世界の存在だけではなく、三兄弟がファンタジー世界を受け入れる結果となったのは、親戚ルシンダの存在でした。

三兄弟の母親ヘレン(Helen)の母親とルシンダが従妹同士で、兄弟同然に育ってきた背景もあり、ヘレンはこの古い屋敷を提供してもらえました。

母と兄弟同然に育ったルシンダのことをヘレン自身も慕ってきましたが、彼女はルシンダに対して複雑な感情を持っています。

というのも、ルシンダは、アーサー・スパイダーウィックが失踪してしまったことで気がふれて、施設で生活しています。

彼女から当時の様子を聞き出して、さらに謎を解いていきます。

妖精やゴブリン達を直接その目で見ているため、もちろん信じざるを得ない三兄弟。

しかし、ルシンダを訪ね、彼女の少女時代の話を聴き、異世界の存在が彼女に与えた大きな影響力について、身を持って感じることになるのです。


異世界の存在を人間が交わるべきではない。

その法則の一方で、存在してしまう、異世界の存在について書き記された、スパイダーウィックの本。

良い存在も悪い存在も、その本を手にすることが目的で、現在の所有者であるジャレッド達に差し出すよう命じてきます。

本の秘密と異世界の存在との関わり、そして未だ解決していない、アーサー・スパイダーウィックの失踪事件。

三兄弟が自分達の親戚の秘密を紐解き、その本が辿る結末を目にした時、何とも言えない読了の満足感に浸ることが出来ます。


そうそう、この作品はヤング向けなので、大人の私には見たことがある単語ばかりかな、と思っていたのですが、こちらでも出ました、知らない単語。

調べたので、ここに記載しておきます。


・nought: ゼロ、無価値、つまらない人

・wrought: 細工した、手の込んだ

・house brownies: household spiritとあるので、日本でいう座敷童みたいな存在として読み取りました。家につく精霊

・fey: 異常な、気まぐれな、気の触れた、千里眼の

・skitter: 動き回る、軽快な

・scurry: 小走りで、ちょこちょこと走る

・bridle: くつわ、手綱

・cobweb: 蜘蛛の網




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