top of page
執筆者の写真Masumi

Book Report: The Story of the Trapp Family Singers

Author: Maria Augasta Trapp

翻訳版の有無: あり「トラップ・ファミリー合唱団物語」

映像化: あり。「サウンド・オブ・ミュージック」

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)



この本を読むと、「信念で逆境を乗り越えられると改めて実感できる」というベネフィットを得られます。


よく、苦労する人生を送る人に使われる、逆境という言葉。

私もあまり言葉の意味を深く意識せず、逆境という言葉を使って洋書作品を紹介していますが、ということは主人公となる人達というのはあまりに苦労人が多いということになります。

(フィクションもノンフィクションも、物事がうまくいっている人の話を読みたいという読者があまりいないということ??)

改めて逆境の意味を調べてみましたが、苦労の多い境遇、と載っていました。

反対に物事がうまくいっていることを、順境というそうです。

 

生まれ育った家が貧乏なこと、自然環境に巻き込まれて人の力でコントロールできないこと、お国柄、など様々な理由で人は逆境に追い込まれますが、本作マリアの場合は時代と金銭的事情でしょうか。

ご存じ、本作はミュージカル化された「サウンド・オブ・ミュージック」が有名で、作品に触れた人達は音楽の力で元気で明るい気持ちになれます。

主人公であり本作の著者マリア(Maria Augusta von Trapp)は、もともとはトラップ家の七人の子供達の一人マリアの家庭教師として訪れた尼僧です。

信仰を支えにした生活をしていたため、当初は僧院から出てトラップ家を訪れるという環境の変化も嫌がっていたマリアですが、信仰を支えにしていたからこそ、これは神の導きだと信じ、トラップ家のマリアを教育しながらも、他の子供達の支えにもなりました。

家庭教師という他人の目から見て、七人の子供達と父親であるトラップ大佐(Captain Georg von Trapp)の間には隔たりがあり、心を痛めます。

前妻で子供たちの母親を亡くしたことが親子の心の隔てを作った大きな原因ですが、子供たちの心を癒そうにも不器用なトラップ大佐はうまく愛情表現ができません。

お金があり、誰もが羨む品物を子供たちに買い与えても、親子に必要なのは一緒に過ごす時間でした。

温かみがない親子関係を何とかするため、マリアは心を砕きます。

特に親子を結びつけたのは音楽でした。

マリアはギターで地方の歌や讃美歌を弾き語りし、音楽を知らない子供たちに歌う楽しさを教えます。

やがてその様子を目にしたトラップ大佐も楽器と共に加わり、親子は絆を取り戻していくのです。

さらにマリアは季節の行事も取り仕切り、子供達に生まれ故郷の慣習を教えていきます。

クリスマスに家族で神様を迎える準備をする様子は微笑ましく、母親を亡くした後沈んだ子供達の心を癒すマリアが一家を照らす光のように見えました。

 

映画はマリアとトラップ大佐がゆっくり惹かれ合っていく様子を丁寧に描き、やがて戦争によって亡命するという流れで締めくくられますが、本作は亡命後、アメリカで音楽一家として活躍する様子との二部構成で描かれています。

ちなみに亡命後の様子の方が章が多く、こちらの方がメインになります。

ここで冒頭の逆境に戻りますが、マリアが経験する逆境は、立場の違う者同士の恋、戦争、金銭面の苦労です。

恋愛は前述のとおりで、家庭教師と主という立場の違いが恋愛面で障害となるのですが、トラップ大佐はもちろん子供たちから支持を得られたのは大きなメリットでした。

戦争と金銭面の苦労は大きくのしかかり、特に金銭面は、トラップ一家音楽隊が軌道に乗ってからも続きました。

亡命したアメリカで、一家はファミリービジネスの音楽隊として収入を得ようとします。

音楽にエンターテイナー性を求める観衆に対し、歴史ある音楽に触れる機会の多い一家。

(オーストリアはモーツアルトを輩出した国です。そりゃ歴史ある。)

アメリカで中々スポンサーがつかないという逆境を経験します。

それでもマリアは、神は一家を見捨てることはないと信じ抜き、奉仕し、ひたむきに音楽隊としての訓練を忘れませんでした。

自分たち同様に自国から亡命した人達とアメリカで知り合い、コミュニティを広げていくので、困ったときに力を貸してもらえることになり、それは一家の支えとなりました。

音楽一家としてスポンサーから求められることをこなすこと、そして戦時中ということも重なって一家は苦労続きでしたが、マリア含め一家は神へ冒涜の言葉を掛けることはなく、どんな逆境も乗り越えられると信じ抜きました。

この信じる力は、彼らを音楽へと突き動かす力となり、一家は素晴らしい歌声で聴衆を癒しました。

 

現実世界で、私達は様々な選択をし、下準備をし、目的に向かって進んでいきます。

何か行動に移る時、私たちは自分たちのビリーフシステムに基づいて行動しています。

何を心の支えにして行動を起こすかは、私たちそれぞれの信じるものの違いで多様ですが、

何かをやり遂げると信じ抜いた先に、私たちは目標達成できるのではと本作を通じて思わされます。

やっぱり、自分は何を大切にしているか、という事項は大切なことなのだと気づかされます。



閲覧数:0回0件のコメント

Opmerkingen


bottom of page