top of page
執筆者の写真Masumi

Book Report: The Talented Mr. Ripley

Author: Patricia Highsmith

翻訳版の有無: あり「太陽がいっぱい」

映像化: あり。「太陽がいっぱい」「リプリー」

英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)



この本を読むと、「大事なことは人任せにしてはいけないと気づかされる」というベネフィットを得られます。


いや、このベネフィットが通用すると、リプリーシリーズは始まらないのですが 笑


先日アラン・ドロン氏の訃報を受けて、再挑戦しようと決意したのがリプリーという作品。

数か月間につまみ食いして、気持ちが乗らずに読書を断念しました。

ほかにも、思い出すと学生時代に映画「リプリー」(マット・デイモン氏主演の方)の存在を知ったところが、本作を読むきっかけです。

映画「リプリー」のリプリーが人の名前だと知らず、学生の私はちょうど、英単語のreply(発音はリプライ)を習ったばかりの頃。

「えっ、何で映画はリプリーっていうの?間違ってない?」

と意味も分からず、勝手に反発した無知な私が蘇ります 笑

今でこそ英語にどっぷりつかっているけど、学生時代は拒否反応を示していた時分だから、言葉を理解しようとしていなかったんですよね。


さて、リプリーシリーズは全五作あり、本作はトム・リプリー(Tom Ripley)がダークな主人公として世に出る初めの作品なのですが、彼がダークな人生を歩むことになるきっかけというのが、ハーバート・グリーンリーフ(Herbert Greenleaf)との出会いです。

グリーンリーフ氏には息子ディッキー(Dickie)がいて、彼に事業を継いでほしいと思っているのですが、当のディッキーはイタリアで絵を描き、優雅に過ごしているようで一向にアメリカへ帰国しようとしない。

グリーンリーフ夫人の体調も良くなく、何とかしたいグリーンリーフ氏が考えたのが、ディッキーの伝で自宅に来たことがあるトムに頼み、息子を連れてきてもらうという策でした。

旅費も出すし、イタリアにいる間の資金も出すから、という好条件を提示してリプリーの協力を得ます。


目的のイタリアでディッキーの元にたどり着いたリプリーは、彼がマージ・シャーウッド(Marge Sherwood)と暮らしていることを知り、そこに滞在します。

最初はリプリーを快く受け入れるディッキーでしたが、次第に疎ましく思うようになり、そしてリプリーも自分の貧しい境遇とディッキーの恵まれた境遇とを無意識に比較するようになります。

リプリーが衝動的にディッキーの衣類を身に着けた様子をディッキー本人に見とがめられたことで、二人の間に亀裂が走ります。

そしてリプリーの衝動は、リプリー=死の匂いをまとう冷徹な人間へと変えていくのです。

そう、リプリーはディッキーを手にかけてしまうのです。


リプリーは衝動によって人の道を踏み外してしまうのですが、その結果に対し、自己保身をする様子は実に計算づくで、一つの取りこぼしもない様子には感心しました。

人を手に掛けるということは、その人がこの世からいなくなるので事件解明までその人は「失踪」ということになり、彼の元にはイタリアの警官が聴取に来ます。

また、失踪した相手を心配して身内がリプリーに会いに来たりと、心理戦が続きます。

はらはらする展開にページを進む手が止まりませんでした。

そして、読み進めながら、ことの発端であるグリーンリーフ氏の申し出に戻り、仕事があるとはいえ、グリーンリーフ氏自らがイタリアに赴いて息子を直接説得すればよかったのにな、と何度も思いました。

直接言葉を掛けると角が立つ、というパターンもあるので一概には言えませんが、人を介したことで最悪の事態に発展したのがこの作品。

ちなみに、上記で失踪者をディッキー一人に特定する書き方をせず「その人」としましたが、リプリーが手に掛けてしまうのはディッキーだけではありませんでした。

スリリングな展開の本作は、残りの四作品の全容を紐解くのにもお勧めです。



閲覧数:0回0件のコメント

Comments


bottom of page