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Book Report: The Things We Leave Unfinished

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 10月4日
  • 読了時間: 4分

Author: Rebecca Yarros

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanced(一年間で一冊洋書を読了できるレベル)


「その強さは、強がり?それとも、弱さを認めたってこと?」



主人公のジョージア(Georgia Stanton)はついてない。

結婚当初は大人びていて素敵と思っていた年上の夫ダミアン(Damian Ellsworth)との結婚生活が、彼の若い愛人の妊娠によって破綻するし、彼との余計な諍いを避けるために曾祖母スカーレット(Scarlett Stanton)が出版した作品の映像権をダミアンに残したままにしているし。

そのスカーレットも少し前に亡くなり、心の拠り所は皆無。

母アヴァ(Ava)は何番目かの夫のところに行っていて、娘とはいえ母を繋ぎ止められないことを知るジョージアは、辛い環境下でも気丈に振舞うしかありませんでした。

そう、彼女は気丈ですが、それは彼女が強がっているからなのです。

そんなジョージアが離婚後に故郷へ戻り、ふらりと入った小さな本屋で同じ客と小さな言い合いをしました。

それは、一人の作家ノア・ハリソン(Noah Harrison)の作品について。


曾祖母の作品が好きなジョージアは、すべてがハッピーエンドを迎える彼女の作品を支持しています。

ノア・ハリソンの作風はよりリアルさを追求するもの。

なので、ハッピーエンドにならない作品もあります。

彼について見知らぬ本屋の客と白熱した議論を広げ、何気ない日常の一こまを過ごしたジョージアでしたが、曾祖母の版権管理の場でその男性と再会することになります。

モレリ(Mr. Morelli)と名乗った彼こそ作家ノア・ハリソンであり、彼は敬愛するスカーレット・スタントンが途中で筆を折った作品を完結させたいと言い出したのです。

その未完の作品とは、スカーレット自身の恋物語でした。

戦時中に出会ったパイロットのジェームソン(Jameson Stanton)と恋に落ち、やがて緊迫する世界情勢の中、離れ離れになってしまう物語でした。

敬愛を込めてスカーレットの作風を守ると言うノアですが、曾祖母とジェームソンの現実を知るジョージアは物語がハッピーエンドになるはずがないと強く拒否します。

ならばと出した条件は、異なる結末の作品を準備してジョージアに結末を決めさせるというもの。

条件を受け入れて、作品の完成を待つジョージアですが、彼女に惹かれ始めたノアは生活環境を一変させ、やがて二人の距離が近づいていくのです。


作品は、現代に焦点を当ててジョージアとノアの物語を描きつつ、スカーレットが置かれた戦時中の状況もまざまざと描いていきます。

スカーレットはイギリスの貴族の家出身ですが、既に斜陽族と化し、実家を捨ててアメリカ人パイロットのジェームソンと未来を見据えていきます。

彼女には頼もしい味方の妹コンスタンス(Constance)がいて、彼女も幼馴染で婚約者のエドワード(Edward)との未来を夢見るので、姉が実家と恋人との間で葛藤する姿に共感します。

やがて戦争がスカーレット達に大きく影響を与えると、何が一番幸せかを問わせ、おのずと強くあらねばと奮い立たせるようになります。

その影響を強く受けたのがスカーレットとコンスタンス姉妹でした。


スカーレットとジェームソンが交わす手紙が残っていて、それを手に取るジョージアやノアは、時代に翻弄された一人の女性の姿を見出し、強く振舞わなければならなかった彼女を思って心を痛めます。

ノアは、スカーレットとジョージアを照らし合わせ、離婚など愛する人と別れてばかりのジョージアが心を痛める本当の原因にたどり着きます。

そしてジョージアは強がっているのだと、気づきます。

強がらなければ、彼女は苦難を乗り越えられなかったのです。

戦火を逃れて未来を守り、離れ離れの大切な人を待つスカーレットとジェームソンの結末と、それをノアがどう描いたのか、ジョージアはどの結末を選んだのか。

肩肘張ってきたジョージアが、自分が作り出した強さが本当の強さだったのか、ということも含めて、曾祖母スカーレットから教わるよい作品になっています。


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