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執筆者の写真Masumi

Book Report: The Viscount Who Loved Me


Author: Julia Quinn

翻訳版の有無: あり。「不機嫌な子爵のみる夢は」

映像化: あり「ブリジャートン家」

英語レベル: Advancedレベル(一年に一冊洋書を読了できる)



この本は、こんな人達にオススメします。

・愛情がなくとも相手を尊敬していれば結婚ができると思える人

・兄弟は大事だけど、コンプレックスがある人

・独身であることを気にしている人



ブリジャートン家シリーズの第二作目にようやく挑戦しました!

今回の主人公はアンソニー。

ブリジャートン家の第一子で長男の彼は、若くして亡くなった父親エドモンドから子爵を受け継ぎ、自身の家と領地を管理する責任を持っています。

前作ダフネのお話でも登場しているので、存在に馴染があり、彼に焦点を当てた本作でもスムーズに物語が入ってきます。


さて、Netflixでも有名になったブリジャートン家ですが、書籍でもNetflixでもアンソニーといえば放蕩者です。

その彼が結婚して身を固めると言い出したので、家族も周囲もざわつきます。

愛情たっぷりで家族を作った自身の両親、エドモンドとヴァイオレットの結婚像を憧れとしつつも、不慮の事故で亡くなったエドモンドの死はアンソニーに大きな影響を与えていて、彼は結婚に愛情を求めないと固く決めていました。

そんな彼だから、花嫁候補の選び方が安直。

「今シーズンの花形女性は誰?」

その回答が「エドウィーナ・シェフィールド嬢」だったため、彼女と結婚することを決めたアンソニー。

ですが、彼女のハートを射止めるにはまず彼女の姉ケイトを納得させることが必須事項だった。


正直、いやぁ、これも面白い、というのが本作品を読んだ感想でした。

前作ではダフネとサイモンが持つ家族像、そしてこれまで自身の家族との関わり合い方の対比がよくなされていました。

今回もよく似ていて、アンソニーとケイトも自身の家族の不幸と向き合います。

ダフネとサイモンは対照的だ、と感じた前作と一転して、アンソニーとケイトはよく似ているという印象を受けました。

彼らは第一子で長男長女という立場にあり、自身の幸せ以上に兄弟の幸せを願っています。

アンソニーが父を亡くした時、彼の末の兄弟はまだ母ヴァイオレットのお腹の中だったため、父親代わりとして心を砕いてきました。

自身の恋は放蕩に、奔放にやってますが、家族や子爵の責任といったことには本当に真面目に、細やかなケアをする男性として描かれます。

一方のケイトも、生みの母親を三歳の時に亡くしています。

とはいえ継母メアリーとの仲も、母親違いのエドウィーナとも仲も良好だし、穏やかな家庭に育っていますが、彼女を一番悩ませているのはエドウィーナと比較されること。

当時の「美人」はエドウィーナで、ケイトは「平凡」という位置づけで見られていました。

数年前に父親も亡くなり、経済的に裕福でないことからケイトの社交界デビューはエドウィーナと合わせて行われることになり、花嫁市場に身を置く女性という視点では決して優遇されているとは言えません。

ケイトは自身の結婚に対し、冷めた態度で臨むのです。

そういう背景を持つアンソニーとケイトは、お互いの交流を通じて家族を亡くしたトラウマの克服をしていきます。


そして、なんといっても本作の登場人物の人物像を印象付けるのが、パルモール(Pall Mall)という競技です。

ブリジャートン家で年間開催のような位置づけで行われるスポーツですが、Netflixのポスターを見ると、ゴルフやゲートボール、クリケットのようなスポーツの印象を受けます。

作中、一緒にプレーすることになったブリジャートン家第三子で三男のコリンから、ボールを打つ器具malletを選ぶよう差し出され、彼女が手にしたのが黒のmalletでした。

実は、黒のmalletは普段アンソニーが使う器具。

彼はこの黒のmalletに、"The mallet of death"と愛称を付けて愛用しています。

彼女が黒のmalletを手にしたことで、この時アンソニーにピンクが回ってくるのです。

ちなみに、エドウィーナが手にしたのは青。

(これがNetflixのポスターに繋がっています。)


このmallet選び、彼ら三人の他に三人の参加者がいて、全六名で回るのですが、彼らが選んだmallet一つ一つが参加者六名の人物像をよく描いていると感じました。

作者はブリジャートン家シリーズ全八作品に、セカンドエピローグを加筆していて、本作品のセカンドエピローグはまたPall Mallをする場面が描かれます。

ここでは、誰が何色のmalletを使うか観察することで、彼らの人物像を観察することが出来ます。

一つネタバレですが、ここでもエドウィーナは青のmalletです。

というか、彼女はこれまでずっと青のmalletを使うのです。

このことから、ケイトとエドウィーナの人物像の違いも垣間見えます。


Netflix版の"The Viscount Who Loved Me"はまだ観れていませんが、書籍を比較すると、いろいろ変更点がありますね。

ケイトとエドウィーナの苗字はシェフィールドから変更していますね。

あと、サイモンは登場します。

実はPall Mallでプレーする人物の一人です。

そして、Netflix前作で登場したアンソニーの恋人のオペラ歌手シエナ・ロッソですが、書籍での初登場は本作品で、かつ本名はマリア・ロッソした。

いろいろ面白いですね。



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