Author: Ellen Raskin
翻訳版の有無: あり「アンクル・サムの遺産」
映像化: あり。「Get a Clue!」
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「お金の裏に何があるか勘ぐる癖がつく」というベネフィットを得られます。
私が継続して購入する英語の通信教育の講座で洋書を取り扱う「ブッククラブ」があり、そのコースの最初の作品がこのThe Westing Gameでした。
(私が受講したのは第四弾で、ハウルの動く城が取り上げられました。)
大富豪サム・ウェスティング(Sam Westing)が亡くなり、十六人の遺産相続候補者が住まうサンセット・タワーにて、ウェスティング氏の死に関わる一人=犯人を探し出した人に遺産を渡す、という内容のもと繰り広げられるゲーム。
二人一組のペアを組み、十六人は与えられたヒントを基に探し出す。
途中、爆弾の仕掛けに見舞われ、怯えながらも彼らは事の真相に近づいていく。
という一見すると面白いのですが、頭に疑問符がついたままラストを迎えたのは私だけかもしれない。
というのは、やはりテーマにした「お金の裏に何があるか」をずっと勘ぐったまま読んでいたから。
ウェスティング氏が集めた十六人のうち、四人は家族(父、母、姉、妹)で、学生もいる。
十六人のうちの一人は、この家族の姉の婚約者の医師インターン。
他にもドアマンや裁判官、サンセット・タワーに入るコーヒーショップの息子達や、同じく中華料理屋の一家三人と、一人一人は関わりないにせよ、十六人の候補に子供も含まれるし家族として関わるというのは山分け出来るし、何だか一人参加の人達には不利な様子。
冒頭の様子では、誰もウェスティング氏と親戚筋と言うわけでもなさそう。
彼ら一人一人に手紙が渡されて、十六人がこのゲームに召集したという形式なので、ウェスティング氏が彼らを呼び寄せた格好になるのですが、何とも言えない裏がありそうなのは冒頭からにおいます。
さすがミステリー。
大人達はお金の魅力に取り憑かれやすいですが、そのせいか本作で魅力を放っていたのは、十六人のゲーム参加者のうち子供や分け者達で、とりわけ魅力的に映ったのは最年少のタートル・ウェックスラー(Turtle Wexler)です。
四人家族の参加者ウェックスラー家の子供で妹の方ですが、口達者で頭の回転の良さが目立ちました。
母親の操り人形みたいな姉アンジェラ(Angela)と違い、タートルは自己主張が出来る健やかな子で、彼女とペアを組んだ年の離れたフローラ・ボーンバック(Flora Baumbach)や、彼女を機に掛けてくれるドアマンのサンディー(Sandy McSouthers)とも大人顔負けにやり取りしてゲームを進めていきます。
タートルに焦点を当てたためか、姉アンジェラも、母親に従順でしたがゲームを通じて自我を芽生えさせる姿が魅力的でした。
彼女とペアを組んだ変わり者のシデル(Sydelle Pulaski)に偏見なく接し、異なる理由で二人とも怪我をするのですが、病院でも相室となり、ヒントから謎を紐解いていきます。
母親は、二人が一緒にいることを嫌がりますが(アンジェラはもう二十歳です。大人として意見を尊重されるべきです。)、アンジェラは自分の意思でシデルと時間を共有し、ゲームに挑むのです。
ウェスティング氏の死の原因や、彼の家族に起きた悲劇とこのゲームとの関連性にあまり納得できずに読み終えてしまったというのが印象ですが、皮肉にも、彼の遺産が一見関わりのない人達を結びつけて不思議な人間関係を築いたことは、一つポジティブなことだったかもしれません。

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