Author: Gayle Forman
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: AdvanceよりのBasic(英語に一日3分向き合えるレベル)
この本を読むと、「負の感情も連鎖すると自覚出来る」というベネフィットを得られます。
The Wickedと聞くと、「オズの魔法使い」を基に作られたミュージカル「ウィキッド」を思い描く方が多いのではないでしょうか。
西の魔女エルファバと南の魔女グリンダの少女時代を描いたミュージカルで、劇団四季で上演される作品ですが、今回の洋書とは無関係です 笑
The Wickedsと複数形なので、複数の悪役達を指します。
ここに登場するのは三人。
シンデレラが王子様と出会うことを阻む意地悪な継母、グウェンドリン(Gwendolyn)。
白雪姫の美しさに嫉妬し毒林檎で命を狙う女王、エルシノーラ(Elsinora)。
ラプンツェルを離れの塔に閉じ込めた魔女、マルガリーテ(Marguerite)。
三人はスパで出会い、意気投合すると、彼女達が"The Wicked"になる前の話を共有して盛り上がります。
そのシーンはよくある女子会。
お伽話の上では悪い女性達の三人ですが、この女子会では普通の女性の姿を見せます。
やがて彼女達は、自分達が理不尽な扱いをされていると愚痴り、彼女達の本懐である「娘に手を掛けること」を実行することについて、合意します。
三人がそれぞれ持つThe Wichedの力を使い、それぞれの娘達を襲撃する彼女達ですが、思わぬ形で邪魔が入ります。
この「邪魔者」もシンデレラ、白雪姫、ラプンツェルの存在のせいで、負の感情を抱き続けた存在です。
そして「負の感情の連鎖」なので、The Wicked世代からリンクするという状況になっています。
The Wicked三人の負の感情が娘達に向かい、その娘達の行動により、更に別の者達へ繋がっていくという情景は、子供向けのお伽話からは考えられない、辛辣な現実を描いています。
The Wicked達の負の感情がこの「邪魔者」に投影され、「邪魔者」の様子を目にしてこれまでの自分達の行いを見つめ直す三人。
負の連鎖は、私達にも当てはまりますね。
親の代から受け継いだ考え方、そう、「価値観」です。
これが必ずしもすべてが負の連鎖ではありませんが、中には今の時代の流れにそぐわない価値観も存在します。
生まれ持った肉体の「男らしさ、女らしさ」。
その時々の年齢による「〇十代らしさ」。
もちろん、これに合致する考え方なら生きるのは楽です。
心も体も「男らしさ、女らしさ」が合致するなら、そのとおり生きることは何の問題もないし、それはすごくシンプルなことなので生きやすいと思います。
今の世の中の流れは、より個を大事にしてもokという流れになっています。
ですから、心と体の性が合致しているからその通りに生きる生き方も、合致しないので人と違う選択をする生き方も、どちらもokだと私は考えます。
ただ、その個を大事にすることと、それを相手に強要することは違います。
AとBの選択があり、あなたと私が違う選択をしても、どちらもokという流れがより良い世の中の流れを作るのではと私は考えています。
今、こういった個を大事にする世の中の流れから、その権利だけ主張する人、自分との違いを認めず批判する人が増えたように感じます。
SNSの発達を機に、その意見が世間に垂れ流し状態。
その意見に振り回されて心が傷つく方々も増えてきました。
このThe Wickedsでも描かれているように、負の感情を持ち続けたThe Wichedsの三人の女性達の思いは、実は形を変えてこの「邪魔者」へ受け継がれてしまったのです。
私達も何かを世に伝える時は、発信力の度合い、気持ちの方向を意識して発信する必要があるなと、本作によって気づかされます。
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