Book Report: The Wind in the Willows
- Masumi
- 2023年6月14日
- 読了時間: 4分
Author: Kenneth Grahame
翻訳版の有無: あり。「たのしい川べ」
映像化: あり「イカボードとトード氏」
英語レベル: AdvanceよりのBasic(洋書に一日3分向き合えるレベル)
この本を読むと、「自分自身を知るきっかけになる」というベネフィットを得られます。
物語に登場する四人組が、始終活躍する様子を見ることが出来る作品、というものに私は何度か出会ったことがあります。
例えばトールキンの「ロードオブザリング」だったり、あるいはAnn Brasharesの「旅するジーンズと16歳の夏」だったり。
*実はどちらも読書途中・・・
ドラマ化あるいは映画化された方の「Sex And The City」の四人もいいですね。
*こちらの書籍はエッセイみたいな位置づけ
さて、本作に登場する四人とは、もぐら: Mole、川ねずみ: Water Rat、ひきがえる: Toad、あなぐま: Badgerのこと。
どうも当時のイギリスの階級を示すとかで、川辺の上流に住む動物から下流に住む動物にかけて、階級が下がっていくとのこと。
ひきがえるが上流階級で、もぐらが下流階級に位置づけられています。
作品を読むと納得出来るのですが、ひきがえるはToad Hallと呼ばれるお屋敷に暮らしています。
さて、自分を知るきっかけというのは、様々な作品でも似たようなコメントをしたことがありますが、本作で指すのは、出自はもちろん、自分の行いとはという外側の部分です。
本作は12話からなるのですが、前半はもぐらを中心に繰り広げられ、後半はひきがえるを中心に繰り広げられます。
もぐらは自分がこれまで暮らしてきた穴の中の生活を捨て、川ねずみと出会い、彼と同居生活を始めることに。
ですが、もぐらは後半、ある日自分がかつて過ごした場所の匂いを察知し、急に懐かしくなり、ひどいホームシックに掛かるというエピソードがあります。
もぐらなので、穴の中という暗い場所で過ごす習性の動物です。
一方で、同居を始める川ねずみ、そして物語が進む中で知り合うあなぐまやひきがえるは、明るい場所に住んでいます。
あなぐまや川ねずみのねぐらはもぐらのそれより比較的開けていますし、裕福な出自設定のひきがえるの家とは比べ物になりません。
それでも、もぐらは自身がかつて暮らした穴倉と邂逅を果たすと、感極まるのです。
それは彼が、もぐらの本能を強く感じる瞬間です。
他の動物達とうまく過ごすし姿勢は素晴らしいのですが、自分のルーツを偽ることは出来ません。
元々謙虚なもぐらは、彼が主人公として進む話の中でもひたすら謙虚です。
一方でひきがえるも、自分の出自を意識することになります。
裕福でお金餅のひきがえるですが、後先考えず自分の道楽にお金を注ぎ込み、周囲から呆れられる羽目に。
自分の道楽のためにトラブルを起こして警察沙汰になり(動物と人間が同居するファンタジー 笑 でも、警察沙汰というのがリアルです)、紆余曲折を経て友人達の元に戻ってきますが、ひきがえるはどこか懲りていないような。
というより、あなぐまや川ねずみはひきがえるの今後のことを心配して態度を改めるように説得します。
道楽者でトラブルメーカーのひきがえるなら、もう付き合ってもらえないよというメッセージが隠れていることに気づけます。
彼は珍しいものや興味を持ったものに挑戦してみたい。
それに挑戦するだけのお金もある。
けれど、それまでは自分のことだけしか考えておらず、周りが受ける迷惑を無視していましたが、自身が警察沙汰になったこと、そんな彼を友人と言ってくれる友が三人もいること、とはいえ彼を庇いきれないとはっきり言ってくれる友人を持ったと気づくことで、かえるは自分の身勝手さを自覚します。
もぐらもひきがえるも、自分の内面を見つめるシーンがあるので、これは心の成長の物語でもあるのですが、それより外側のアイテムである出自が引き立つ本作品。
冒頭で記載したように、階級を意識させるために外側をより意識させる書き方になっています。
家柄や友達の人数など、目に見えるものだけで自分や相手を推しはかろうとしていませんか?
こんな質問を投げかけてくれる作品でもあります。

Commentaires