*この記事は2021年11月14日にNoteへ投稿した記事の再編です。
Author: Nicholas Sparks 翻訳版の有無: なし 映像化: なし 英語レベル: Advancedレベル寄りのBasicレベル(洋書に一日3分向き合える)
この本は、こんな人達にオススメします。 ・いつまでも色褪せない大切な思い出がある人 ・たとえ現状に満足していても、「もしもあの時、違う選択をしていたら・・・」と心にモヤモヤを抱えている人 ・今の自分を作るきっかけをくれた大切な人がいる人
前回の投稿から随分時間が経ってしまいました。
皆さん、たくさん本を読んでいましたか? 洋書Lovers普及委員会 委員長Masumiは洋書Inputと新たな洋書の仕入れとで大忙しでした。 この世の中なので物流に心配はありましたが、先月、予定より一週間早く手元に届いたNicholas Sparksの新作The Wishを手にして、読み始めから一週間で読破した時は何とも言えないノスタルジックな気持ちに浸っていました。 新作のタイトルがThe Wishだと知り、wishを使う時の意味(叶わない気持ちや出来事を願う時にwishと使います。叶いやすい時はhopeを使います)を思い返して、「きっと主人公にはやりたかった出来事、なりたかった自分があったけど、それが叶わなかったんだな」と思ったことを記憶していますが、実際に読んでみたらそうでした。
物語の舞台はクリスマス間近のニューヨーク。
写真家として有名になり世界中を飛び回っていたマギー(以下Maggie)の今年のクリスマスは、いつもと違う。 病気のため、海外へ行くどころか今までのように生活することが叶わなくなりました。 仕事仲間は休暇のため彼女の傍にはいられませんが、代わりに、数か月前に採用された若いスタッフのマーク(以下Mark)が彼女の世話役として傍にいることに。 Markは、写真家Maggieの動画投稿サイトを閲覧するファンの一人ですが、ファン気質を出さず、誠実に仕事に向き合う姿がMaggieや彼女の同僚から評価されています。 彼にも交際中のアビゲイル(以下Abigail)がいますが、Abigailは彼女の家族とクリスマス休暇を過ごすため、Markも一人きりのクリスマス休暇になるため、Maggieと一緒に過ごすことに特段問題もありません。 彼とのふとした会話の中で、病気により少し気弱なMaggieは思わず自分がなし得なかったことを口にします。 その一つが結婚で、自分の両親のようにパートナーを見つけて伝統的な結婚をする人生を送るものだと思っていたMaggieは、有名な写真家になり、世界を飛び回り、人から羨まれる生活を送っていても、「あの時、こうなっていたら・・・」という事柄があるとMarkに零すのです。 結婚だけではなく、もし自分がもっと勉強していたら、大学を卒業していたら、いわゆる「普通」の人生を送っていたらどうなっていたかとMaggieは過去を思い返します。 そこでMarkは尋ねます。 結婚したいと思っていたのに、なぜしなかったのかと。 そう思わせてくれる人に今まで出会わなかったのかと。 Maggieの脳裏には一人、16歳の時に出会ったブライス(以下Bryce)が浮かび上がります。 当時の自分は彼に相応しくないと、愛する人を思って身を引き、叶うことのなかった自らの大事な恋物語を、MaggieはMarkに語ります。 クリスマス期間も相まって、Maggieが自身の恋を話し終える頃には素敵な奇跡が自身とMarkを包むのでした。
まるでDickensのクリスマスキャロルのように、昔を懐かしんでノスタルジックになる話でした。 自身の幼い行動によって、16歳のある期間を家族と離れて暮らすことになったMaggieを成長させてくれた人がBryceで、彼の趣味である写真にMaggieも感化されて写真を撮り続けます。 Bryceと別れを選択せざるを得ず、将来もう一度再会を誓うも、様々なタイミングによって彼と一緒になれない人生を送る羽目になりましたが、彼と共通の趣味だった写真を通じてMaggieは名声を得ます。 Bryceを通じてMaggieは、両親にも自身の兄弟にも持たなかったスキルで自身の未来を作ります。 そんなMaggieの話を興味深く聴くMark。 一人っ子のMarkは、Maggieの過去を聞く中で、優等生で両親に愛された姉に対しMaggieが強烈な劣等感を抱いていることを感じます。 それは今でも変わらず、家族と異なる生活を送るMaggieはエキセントリックで、故に孤独で家族に壁を作っているのだと見抜きます。 両親との仲が良好なMarkに対し、16歳で親元を離れ、今でもぎくしゃくしたままのMaggieは少しの羨ましさを感じながらも、いつか、病状が悪化する前に自身の状況を伝えなければと感じますが、中々踏み切れません。 直接の原因ではないにせよ、少なからずBryceと離れ離れになった要因を作ったのが両親であり、写真家となった後も両親と違うライフスタイルのMaggieと両親の間で理解が出来ず、壁ができてしまったからです。 まっすぐでどこか大人びたMarkに、MaggieはBryceに感じた安心感を感じるのです。 MaggieとBryceは未来を作ることは出来ず、Maggieにとって忘れられない人となりました。 自分の輝くステージを写真に見出し、有名になりましたが、本当にほしかったBryceとの未来は心の中で思い描くに留まるもの。 16歳のあの時、違う選択をしていたら。 Bryceといられる時間はもともと限られていたけれど、彼との
別れ方がもっと違っていたら。 再会すると誓った日をもっと早く設定していたら。 いろいろな「If」が生まれては消え、そのたびに叶えたかった夢が思い浮かびますが、Maggieは自身の過去を話し終え、Markとクリスマスプレゼントの交換をし終えた時、思わぬ未来を手に入れることになります。 誰しも「あの時こうしていたら」と選ばなかった未来を想像することは、一度や二度あるでしょう。 今の自分が間違いだったかもと、落ち込むこともあるでしょう。 私も同じように、「あの時こうしていたら(していなかったら)」と考えることはしょっちゅうあります。 でも、きっと時間を戻して同じ場面に身を置かれても、きっと自分はその時と同じ選択をすると思います。 なぜなら、今を生きる自分が、今の自分が好きだから。 あの時Aの選択をしていたら、もっとBという結果を早く得られたかもしれない。 でも、Aの選択をしなかったからこそ、Bにたどり着くまでにCやDの出来事に遭遇して成長した。 MaggieはBryceとの未来が作れなかったことは、後悔する事柄が多くありましたが、自分を作り上げてくれた彼の存在は生きていく上では欠かせない大切な人であり、彼との出会いを悔やむことはありません。 Bryceとの出会いが、多くの輝きを自身の人生に与えてくれました。
Comments