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執筆者の写真Masumi

Book Report: Then Came You

Author: Jennifer Weiner

翻訳版の有無: なし

映像化: なし

英語レベル: Advanceレベル(洋書を一年間に1冊読了出来る)


この本は、こんな人達にオススメします。

・現在のライフバランスを見直している人

・性に関する課題に向き合っている人

・女性とは、ということを考え直している人


この作品の主軸になっているのは妊娠。

作品を通して、母親とは何かということを意識する物語でした。


この作品に登場して物語を動かすのは四人の女性達で、母親になることを通じてそれぞれが抱える課題に向き合うことになります。

彼女達は今の生活に問題を抱えていました。

特にジュールズ、アニー、インディアに共通する課題は「お金」。


ジュールズ(Jules)は鬱を発症しアルコールに走る父親への金銭的支援。

アニー(Annie)は安月給の夫との生活。

インディア(India)はビジネスマンの妻になり優雅な生活をしながらも夫に伝えていない過去に向き合います。

特にインディアは、夫の子供達のうち彼の娘であるベッティーナ(Bettina)から嫌われていて、彼のトロフィーワイフとして現れた嫌な女として見られていることを自覚しており、彼女とどう折り合うかという点も課題です。

この点は、ベッティーナの視点でも物語が進みます。

一見してインディアとベッティーナ以外共通点のない四人は、Princeton Fertility Clinicという産科クリニックを通じ、卵子提供者、代理母、そのサービスを受ける者として関わることになります。


上記に記述した、母親の課題は、自分が母親になること以外にも、彼女達の母親から受けた問題も物語が進むうちに浮き彫りになります。

例えばジュールズです。

間もなく大学を卒業する、眩しい未来が待っているジュールズですが、彼女には人身事故を起こして後ろ指差される人生を送る、父親がいます。

父親の人生が転落する過程で、両親が夫婦としての愛情が離れ夫婦生活が破たんしたことに心を痛めます。

父が鬱病だと診断される前後に、彼はアルコールによって人身事故を起こしてしまい、そのために彼の人生が転落していきます。

彼は教職に就いていたため、スキャンダルが彼の知名度を下げて、結果的にジュールズの母がジュールズの父から離れていきます。

現在、彼は別の女性のアパートで生活し、この事実も、母はもちろんジュールズを苦しめます。

浮気が先か、鬱が先か、私は読み取れませんでしたが、父親の人身事故以降、ジュールズが理想とする「自分の両親が愛し合って、自分と一緒に生活すること」とは程遠い生活が繰り広げられることになります。

しかも、父親の恋人には金銭的余裕がなく、彼を病院に通院させて治す手段がありません。

悩めるジュールズはある日、大学の講義後に立ち寄るいつものショッピングモールのカフェテリアで、Princeton Fertility Clinicの勤務者から声を掛けられ、協力を決意するのです。


こういった具合に、ジュールは自身の父親が直面する課題を通じ、自分が母親になる機会を得て、自分の父親の心身がどう改善していくのかを見守る立場になります。

アニー、インディア、ベッティーナも同じく「母親」に課題を抱えていて、そのエピソードを通じて自分と向き合っていきます。

アニーは、老いていき物忘れが進む母親との関わり方、彼女の姉が子供を産まない選択をする姿勢、そして自分の子育てに悩みます。

インディアは自身の秘密を紐解く中で、若くして自身を産んで祖父母の元に置いていった母親から愛情を得られなかったことに苦しんだことを思い出します。

ベッティーナも実は母親に関する課題を抱えています。

彼女の両親は離婚しましたが、それは母が夫を捨てて彼女のヨガインストラクターに走ったことが理由です。

離婚せざるを得なかった父の憔悴した姿を見てベッティーナは心を痛めますし、自身の母親と性格や雰囲気など異なるインディアを継母として認められません。

彼女はいつか母が、自身の行動を悔いて目を覚まし、父とやり直したいと言って戻ってくることを夢見ているため、父の再婚相手として登場したインディアが許せないのです。

直感的にインディアが胡散臭い存在と感じたベッティーナは、探偵を使ってでも継母を引きずり出したい気持ちでいっぱいなのです。

それもそのはず、ベッティーナの父親は実業家でお金持ちなので、インディアがお金目当てで父に近付いたとベッティーナは思っているのです。

お金が欲しい人、お金が出ていくことを阻止したい人。

彼女達の思惑は、物語が進むにつれて思わぬ方向で邪魔が入ります。


各自先行き不安な中、お金を使って生活を良くしたいと思い、その解決策が母親になることであったジュールズ、アニー、そしてインディア。

彼女達が抱える不安の解決策であった妊娠が、どのような結果をもたらすのか、目が離せない作品です。



本作品の作者Jennifer Weinerは、本作以外に「イン・ハー・シューズ」も執筆しています。

性格の違う姉妹が自身の母親の死を通じて、お互いの存在を認め合う作品です(映画より説明)。

どちらも作品を通じて「母親の課題」が出てきますね。




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