Author: Meg Cabot
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanced(一年に一冊洋書を読破出来るレベル)
この本を読むと、「人が忌む事柄も見ようによっては魅力を感じる」というベネフィットを得られます。
本作のテーマは三作通じて、ギリシャ神話のハデス神とその妻ペルセフォネのエピソードです。
ギリシャ神話をかじった人ならピンときますが、ハデス神とその妻ペルセフォネといえば、突然春の温かな日差しの中で生活する世界から死を司る暗闇の世界に連れていかれた女性の恋のエピソード。
季節の移り変わりと死の静寂について考えさせられます。
(あと、私は冬木るりか先生の作品「アリーズ」に出会っていて、この作品はギリシャ神話を踏襲するのですが、主人公の二人がハデス神とペルセフォネの転生後の姿なのです。Underworldを読み進める際、「アリーズ」のイメージに助けられました。)
死を司る神をルーツとするジョン(John Hayden)と出会い、数々の身の危険を逃れるために彼の手で助けられた女子高生ピアース(Pierce Oliviera)は、本作でも親交を深めていきます。
自分の身を付け狙うフューリー(Fury)という存在の祖母につけねらわれるという、悲しい立場のピアースは、どうもこの神話をモチーフにした立場故に命を狙われているとのこと。
ジョンに彼が住む世界に連れてこられ、やがて彼と同じように長寿の力を得ます。
家族や親しい人達と離れることになるのは心が痛みますが、ジョンとも両想いの関係にあり、それが厄介なところ。
本作では、ジョンがどういった理由で長寿の力を得て、ハデス神よろしく死に関する仕事に従事するようになったのかも描かれています。
死を司る世界、いわゆるアンダーワールド(Underworld)に属する新たな仲間達も登場します。
生と死の狭間で、ピアースは結局ジョンを選ぶことになるのですが、自分の大切な家族の母、叔父クリス、従兄弟のアレックスを危険な存在である祖母の近くに残すのが心残り。
しかも本作では、母と叔父クリスは、ピアースとアレックスの同級生セス・レクター(Seth Rector)の父親と仲が良かったらしく、どうも親の代から続く確執に巻き込まれている様子。
母とセスの父親は学生時代の恋人だったらしく、そして叔父クリスとセスの父親、もう一人の共通の友人が地元にはびこる怪しいビジネスに足を突っ込んでいたようで、これが原因でクリスは犯罪に巻き込まれ、長い刑務所生活を送ることに。
現在と過去を繋ぐエピソードが出てくる中、ピアースは依然なぞの存在のジョンの過去を探っていくことに。
死を司る立場にあるハデス神やその妻ペルセフォネは、ギリシャ神話の中でさぞ神経を使って接される存在だったのでしょう。
生まれるものがあれば死ぬものがあるのは当たり前なのですが、私達におって死は、あまり触れるべきでない、むしろタブー視されているアイテムです。
その死とかなり距離が近い経験をしたピアース。
(ヒューリーの祖母の手によって、ピアースは冬のプールで溺れて仮死状態を経験します。その事故が原因で両親が離婚します。)
ひどいエピソードがきっかけですが、ピアースの近くに死がありました。
死を具現化したジョンと今後どうなっていくか、最後の話で明らかになりますが、死に魅せられたピアースの行く末が気になります。
敵となった祖母が三作目でどう出てくるのか、やはりここが一番気になるところですね。
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