Author: Gayle Forman
翻訳版の有無: なし
映像化: なし
英語レベル: Advanceレベル寄りのBasic(洋書に一日3分向き合える)
この本は、こんな人達にオススメします。
・まだ終わっていない愛がある人
・孤独な人
・クラシック音楽とロックがどこかで融合出来ると信じている人
前回のBook Reportで紹介した「If I Stay」の続編が、本日紹介するWhere She Wentです。
仮定形で表現された前作「If I Stay」と過去形で表現された今作「Where She Went」から、私はそのタイトルが醸し出す何とも悲しい雰囲気を感じ取りました。
その直感は正解。
どちらもお別れのお話です。
前作の主人公Mia(ミア)は両親と弟と車で移動中に事故にあい、彼女自身は昏睡状態に陥ります。
今作はミアの当時の恋人アダム(Adam)の視点から展開される物語。
当初インディーズバンドのShooting Starのボーカルとして活動するアダムと、セリストの道を行くミアという将来の岐路に立たされた二人が、交通事故によって非常に距離が近付きました。
しかし、二人は別れの道を行くことになり、あの事故から三年が経った後、悩めるアダムの視点で物語が展開します。
インディースバンドからメジャーに転向し、スターダムにのし上がり、恋人も出来た一見順調なアダムですが、あの事故とミアとの恋愛を終わらせることが出来ていません。
Shooting Star始動当初から切磋琢磨した三人のバンド仲間とも軋轢があるし、ミアの亡霊に囚われるアダムへプレッシャーをかける恋人の存在も、アダムにはストレスで、安定剤がないとうまく眠れない日々を過ごします。
そんなアダムが、雑誌のインタビューを受けた後にインタビューアーと喧嘩別れし、ニューヨークを彷徨い、ミアと向き合うことになります。
スターダムにのし上がるまでは、地元で有名ないわゆるご当地アイドルで済んだShooting Starも、知名度が上がったことでアダムは日常とのギャップに苦しみます。
彼はボーカルであり、Shooting Starを有名にした彼らの楽曲が、ミアの事故の後に彼が書き記した詞をもとに出来たものだったので、「ボーカルとその他愉快な仲間達」扱いする世間に影響されて、Shooting Star内で軋轢が出来てしまったのです。
様々な人達に囲まれているのに孤独なアダム。
恋人といても、バンド仲間といても、アダムは心にぽっかり空いた穴を埋められずにいます。
そして運命のカーネギーホールでミアの痕跡に触れることで、彼は三年前に置いてきた過去と向き合うことになるのです。
クラシックを愛すミアと、ロックを象徴するアダム。
種類が違えど音楽好きという共通点で惹かれ合うミアとアダムがたどり着いた先で、彼らがどういう決断を出したのかが丁寧に描かれている作品です。
あの交通事故が起きなければ、当然どこにでもいる温かい家庭の中でミアは育ち、アダムとの違いに悩みながらも最善の未来を選択したと思います。
それが、あの交通事故のために、お互いに痛みと悲しみを抱えることになってしまった。
当時結婚はしていなくとも、イベントごとにミアの家族と過ごしたアダムは、ミアの両親と弟とは家族同然に扱ってもらっていたし、亡くしたことはトラウマになりました。
もしも私がここに留まったのなら。
彼女が向かった場所。
ミアとアダムは様々な別れを経て、その傷に二人で向き合うエピソードがこの作品で描かれています。
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