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Book Report: Where the Crawdads Sing

  • 執筆者の写真: Masumi
    Masumi
  • 2024年4月15日
  • 読了時間: 4分

更新日:2024年8月9日

Author: Delia Owens

翻訳版の有無: あり「ザリガニの鳴くところ」

映像化: あり。「ザリガニの鳴くところ」

英語レベル: Advanced寄りのBasic(一日3分英語と向き合えるレベル)


この本を読むと、「自分を信じ抜く力が鍛えられる」というベネフィットを得られます。


本作との出会いはSNSで、ショート動画を目にして興味を抱き、購入しました。

別の本を読んでいたなどの理由ですぐ読むには至らず、しばらく放置していたのですが、先日よく行く本屋さんで本作が一部のコーナーを使って紹介されており、これは話題に乗らねばと先週くらいから読書し始めて今に至ります。

2021年本屋大賞 翻訳小説部門第一位作品だそうです。

ラストのどんでん返しはある程度予測出来ましたが、実際に読むと心を掴まれ、最後まではらはらする展開でした。


本作は、七歳の時に家族全員から湿地のある家に一人置いてけぼりにされた主人公カイヤ(Kya。正式にはCatherine)が経験した二つの恋と、ある事件を通じ、力強く生き抜く人生を描いています。

湿地の自然にも触れており、生物学に触れるとともに捕食者と被捕食者の関係を示しています。

この場合、カイヤは被捕食者、つまり弱者です。

1969年のある日、地元の少年二人が塔の下で亡くなっている男性をみつけたところから物語が始まります。

彼は町の有望な若者であるチェイス・アンドリューズ。

どうやら塔から転落した際の頭蓋骨への衝撃が致命傷となったよう。

事故か事件か、と捜査を進める地元警察のエドとジョーの元に、チェイスが事件当日までつけていた貝殻のネックレスがなくなっているという証言を受け、このネックレスをチェイスに渡したカイヤに捜査の目が行きます。

という、現代1969年の視点と、家庭内暴力を繰り返す父を見限り母が出ていきやがて家族全員が湿地からいなくなり、一人取り残された幼いカイヤが生き抜き成長する視点とが交差する書かれ方をしていきます。

当時はまだ人種でコミュニティーを分ける情勢なのですが、カイヤのコミュニティーであるはずの白人たちは「湿地の少女」であるカイヤを助けず、ボートへのガソリン供給をする店の黒人店主ジャンピンとメイベル夫妻から施しを受け続けます。

カイヤが女性として成長する時にも、メイベルから助けてもらいます。

また教育については、市の職員に促されて一度登校したものの、生徒達に馬鹿にされたことでカイヤは登校を拒否。

そんなカイヤの状況を知っている少年テイト(Tate)が、父の仕事を手伝う傍ら時折カイヤの元を訪ねて勉強を教え続けます。

やがて二人は恋に落ちますが、年上のテイトはやがて大学へ進学し、その年の夏の祝日に帰る約束を破ったことからカイヤは心を痛め、その幼い恋は破局。

数年後のある日、家から地元の店へ出てきたカイヤへチェイスが近づいたところで、本作の要である事件へ繋がっていきます。


カイヤは常に被捕食者でした。

暴力的な父親と生活すること、母と兄弟は皆彼女を置いて逃げ出したこと、初恋のテイトも世間に出れば自分の無力を知り怖気づいてカイヤとの関係を続けられず、離れます。

そしてカイヤは何も悪くないのに、町の人達から「湿地の少女」として嫌われます。

カイヤとしては何を信じればいいかわからない状況です。

結局は自分しか信じられなくなります。

テイトに裏切られた時は読者としても読み進めるのがつらかったです。

もう自分の心は誰にも渡さない、とするカイヤですがチェイスの登場と彼がぐんぐん距離を縮めるので、彼との新たな恋も期待できる展開でしたが、彼がとんでもなく不誠実でした。

彼こそ捕食者。

カイヤから搾取しようとします。


カイヤは確かに被捕食者ですが、彼女は幼い頃から一人で生き抜く力をつけてきたので、バイタリティーもあるし何より湿地に関する知識が豊富。

長年ムール貝を取り、ジャンピンへ卸してお金をもらう生活をしてきたカイヤですが、別れたテイトが謝罪に現れた際、彼から湿地のことに関し執筆を勧められてやがて出版することに。

結果、彼女の収入源が確立されるのですが、生きる知恵が彼女のライフワークとなるのです。

カイヤの生きる力に引き込まれます。

彼女の人生と町を巻き込んだ一つの事件は、やがて結論が出て、元の町に戻ります。

被捕食者であるカイヤが生き抜くために行ったことの真相が、最後に明るみになります。

ミステリーとしても、一人の女性のバイタリティーを見守る作品としてもお勧め出来る作品です。



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