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執筆者の写真Masumi

【Narnia】 The Silver Chair

Author: C. S. Lewis

翻訳版の有無: あり。邦題「銀のいす」

映像化: なし

英語レベル: Advanceレベル(洋書を1年間に1冊読了出来る)


この本は、こんな人達にオススメします。

・ずっと会っていない会いたい人がいる人

・ほんの少しの勇気がほしい人

・誰かの素の姿を知りたい人


ジル。

良い名前ですね。

この「銀のいす」を読み始めた時に思った私の感想です。

物語の内容の前に、本作の主人公であるジル・ポール(Jill Pole)の名前が素敵ですぐに興味を覚えました。

たぶん、私達が住む日本にJill Stuartなるブランドが存在するので、ジルという名前を聞くと可愛いとかフェミニンとか、可愛らしい印象を抱くのだと思います。

ですが、読み進めるとこのジルさん、弱虫というか湿っぽいというか、好奇心旺盛を絵に描いたペベンシー四兄弟の末っ子、ルーシーの溌剌とした対照的な登場人物がいるからか、人物を知っていくと「ん?」と思うところがあります。

通っている学校の方針があまり良くないため、いじめっ子に目をつけられていじめ被害に遭う設定もネガティブに影響しているためか、名前の印象とは裏腹に徐々にジルへの好感度が下がっていきました。

ザ・長女な性格で、前作「朝ひらき丸 東の海へ」でザ・女子に変わったスーザンともまた違う、キャラクターです。

彼女と共に登場するのが前作で登場したザ・小物のユースタスですが、前作の話が進む中で精神面で成長しだいぶ落ち着いた印象に変わっています。

ユースタスとジルは同級生という設定です。


今回は「行方不明の王子を探し出すこと」をタスクとして与えられます。

与えられたのはユースタスではなく、ジルでした。

現代からナルニア国へ呼ばれた二人ですが、到着してすぐジルは誤ってユースタスを命の危険にさらしてしまいます。

ユースタスと物理的に離れ、一人になったところで全能の存在であるアスラン王と出会ったジルは、行方不明の王子を見つけ出す指令を出され、何とかユースタスと再会させてもらえます。

さて、この行方不明の王子というのはカスピアン王に繋がる存在。

ジル達がナルニア国に呼ばれた時点から時を遡り、この王子が行方不明になる前の時分、王子とその母親が乗馬で遠乗りしていた時に、母親が魔物の蛇に噛まれて命を落としてしまいます。

悲嘆にくれる王子とその父王に追い打ちを掛けるように、同じ場所で今度は王子が女性の姿をした魔物と出会い、その後ぱったりと姿を消してしまったのです。

その時分から時が経ったナルニア国にユースタスと共にジルが呼ばれたわけですが、前作のように行方知らずの人物を探しに行く旅であることには変わりないのですが、今回の物語の雰囲気の印象がどこか暗かったです。

おそらく、今作で捜索される側の人間=王子がジルとユースタスにより近いであること、また、前作と比較した場合に王が臣下を探す図より父王が息子を探すという図の方が、だいぶ悲壮感が伝わるので物語に影響しているのかと思いました。

時期も、前回は(嵐の日もあるとはいえ)航海中に太陽を燦々と浴びる日もあるため全体的に明るいですが、今作のナルニア国は冬の影響かどんよりした気分になりました。

ナルニア国の冬と言えば第一作「ライオンと魔女」。

こちらの作品での冬は、魔女ジェイディス(Jadis)がナルニア国中から季節を取り上げて強制的に冬にしてしまい、彼女の強い圧力を感じるような空気が国に漂っていました。

雪も深く積もり、彼女の存在を意識せざるを得ない冬。

ある種の潔さを感じました。

一方で「銀のいす」の冬は、ジルとユースタスの冒険の途中に雪がちらつき始めるというシーンが出てきます。

巨人の住処を訪れるシーンがあるのですが、その時に雪がちらつき始めます。

山間の中を旅するシーンなのですが、その時の空気はどんよりとした空、周りはごつごつした岩だらけという環境下で目的地へ訪れるというシーンなのですが、読んでいて私の気分が躍らなかったことを覚えています。

「朝ひらき丸 東の海へ」ではうきうき出来たのに。


さて、今回の作品で初めてペベンシー四兄弟と関係ないジルが登場しました。

ユースタスはペベンシー四兄弟の従兄弟に当たるので、ジルはいわゆる赤の他人。

冒頭で記載した通り、彼女は学校でいじめ被害に遭うという悲しい境遇にありますが、彼女がなぜナルニア国に行けたかというのは、ユースタスからたまたま話し掛けられたから。

いじめに遭って学校の陰で泣いていたところに偶然ユースタスが通りかかり、彼女に話し掛けて気遣うのです。

前回ナルニア国に呼ばれている立場を見ると、むしろジルはユースタスに巻き込まれてナルニア国へ行きました。

例えばユースタスが泣いているジルを無視して通り過ぎたとしたら、ジルはナルニア国へ行くことはなかったかもしれません。

それにしても、ユースタスがジルへ話し掛けるという決断をしなければ、ジルはナルニア国へ行くことはなかったと推測します。

それにしてもユースタスがジルを気遣ってあげられる姿に、彼の成長が見られます。

いじめはどんな理由があっても良くありません。

困っている人に対して、少しの勇気を見せられるだけで、困っている人の気持ちを和らげてあげられると信じています。

先のコメントに戻りますが、新たにジルが加わったことで「ナルニア国に呼ばれるのはペベンシー家に関係するから」が崩れましたが、次回作ではどんな人達がナルニア国へ訪れるのやら。


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